利率が大きく上がったマンションすまい・る債──応募を決める前に理事会で確かめる3つのこと
すまい・る債の利率が大きく上がりました。ただし応募書類を出せば購入が完了するわけではなく、その後の積立申込みと振込まで続きます。上がったのは10年をならした平均で、元本保証でもありません。要件と上限を含め、理事会で確かめる三つを、機構の公表条件から整理しました。

管理組合の相談コンシェルジュ、フクロウのコネルです。修繕積立金の置き場所として知られてきたマンションすまい・る債の利率が、前の年度と比べて大きく上がりました。見送ってきた理事会でも、届いた案内を前に話題に出たのではないでしょうか。今年度の応募期間も、終わりに近づいています。
持ち帰っていただきたいことは三つです。一つ目は、応募に期限はあっても、応募書類を出せば終わりではないということ。その後に積立の申込みと資金の振込が続きますから、誰がどこまでやるかを今月の理事会で決めてください。二つ目は、上がったのはならした平均で、利息の大半は後半に来ること。しかも元本保証ではありません。表示された平均利率だけで判断せず、使う時期、元本の安全性、中途換金の条件、税引後の受取額を分けて確かめてください。三つ目は、対象となるマンションの条件も、応募の要件も、制度上の上限の決め方も定まっていること。手元の管理規約、長期修繕計画、決算書、予算書で、主なところは確かめられます。ただし、制度上の上限と、その組合が買ってよい額は別のものです。
この記事で扱うのは、機構が公表している今年度の条件と手続、それに来年度に向けた制度拡充の報道です。報道はまだ決まった話ではなく、今年度の判断はいまの条件だけで考えます。
いまから申し込んで、今年度の分に届くのか
通常の応募期限は2026年10月9日です。ただし先着順なので、募集口数に達した場合はそれより前に受付が終わります。そしてもう一つ、応募を出せば購入が決まるわけでもありません。ここが見落とされやすいところです。
なお、ここでいう応募が要るのは、新たに購入する場合のほか、中断したあと再開する場合、購入口数を変える場合、10回の継続購入を終えて改めて買う場合です。同じ口数で継続購入中なら、改めて応募するのではなく今年度の積立手続を行います。
郵送なら10月9日の消印、Web申込サービスなら同日の申請が期限です。募集口数を超過した場合、応募期間の終了日は超過した日の前日に前倒しされ、それ以降に到達した応募は無効になると機構が明記しています。
いずれも三商品の合計で、募集口数に対して応募は3割ほど。応募状況は機構のホームページで公表されています。
添えるのは管理規約の全文と、代表権が確認できる総会議事録等。どちらもコピーで構いませんが、管理会社から取り寄せる場合は、書類の確認や受取りに日数がかかることがあります。Web申込サービスを初めて使う場合は、管理組合の代表者が新規の利用登録を行い、機構の承認を受ける必要があります。承認には不備の是正も含めて2週間ほどかかるため、締切が近いときは郵送も検討するよう機構が案内しています。管理会社に代行入力してもらうなら、その会社側の登録と、代表者による内容の承認も入ります。
応募の後、購入を進めるには、改めて積立の申込みと積立金の振込が要ります。郵送なら積立用書類を返送し、Web申込サービスなら「債券積立申込み」を申請する形です。機構が示す今年度の日程は、この申込みが2026年11月20日から2027年1月8日まで、積立金の振込が2027年2月3日まで、債券の発行日が2027年2月22日。いずれも予定です。
応募から発行まで半年近くあり、その間に理事の任期が切り替わる組合もあります。誰が受け取り、誰が期限を管理し、誰が振込を手配するかまで決めておくと、後で慌てずにすみます。
利率はどれくらい上がったのか
前年度の募集分と比べて、4倍近くになりました。どちらも、満期まで持ち続けた場合に受け取る利息を年あたりに平均した利率です。
| マンションすまい・る債 | 10年満期時年平均利率(税引前) |
|---|---|
| 前年度の募集分(2026年2月発行) | 0.525% |
| 今年度の募集分(2027年2月発行予定) | 2.000% |
今年度は三種類が募集されていて、管理計画認定を受けた組合向けの認定すまい・る債は10年平均2.100%、一定の評価を受けた組合向けのステップアップすまい・る債は同2.050%。いずれか一つを選んで応募するもので、両方を満たしていても上乗せが重ねて加算されることはありません。
ならした利率は、毎年同じだけ利息がつくということか
違います。1年目と10年目では利率に大きな開きがあり、10年で受け取る利息の8割超が後半の5年に寄っています。今年度募集の通常のマンションすまい・る債を1口、50万円分買った場合が次のとおりです。認定すまい・る債とステップアップすまい・る債は、各年の利率も受取額も別になります。
| 利払い | 単年の利率(税引前) | その年の受取利息(税引前) |
|---|---|---|
| 1年目(2028年2月) | 0.400% | 2,000円 |
| 2年目(2029年2月) | 0.600% | 3,000円 |
| 3年目(2030年2月) | 0.800% | 4,000円 |
| 4年目(2031年2月) | 0.800% | 4,000円 |
| 5年目(2032年2月) | 0.900% | 4,500円 |
| 6年目(2033年2月) | 2.260% | 11,300円 |
| 7年目(2034年2月) | 2.780% | 13,900円 |
| 8年目(2035年2月) | 3.300% | 16,500円 |
| 9年目(2036年2月) | 3.820% | 19,100円 |
| 10年目(2037年2月) | 4.340% | 21,700円 |
| 合計 | (平均2.000%) | 100,000円 |
税引前の額は発行のときに10年分が確定しますが、税引後に残る額は税率が変われば変わります。現在の税率が続いた場合の参考額は84,690円で、税率等は今後変更となる可能性があると機構の資料にも添えられています。
前半5年の合計は17,500円、後半5年は82,500円。税引前で10万円になりますが、大半は後ろに来ます。
この形は今年度に始まったものではありません。前年度発行分も1年目が0.010%、10年目が1.326%と、同じように後半へ寄っていました。
途中で資金が必要になったとき、すぐ換金できるのか
換金する道はあります。ただ、預金の払戻しのように、必要な日に自由に引き出せる仕組みではありません。
中途換金は修繕工事等のために行うものと定められ、機構による審査および承認が要ります。時期は原則として初回の債券発行日から1年以上が経った後。ただしマンションの緊急の修繕工事等、やむを得ない事情があるときは1年未満でも換金できることがあり、その場合は機構への個別相談が要るとされています。単位は1口、つまり50万円です。
手続は、換金したい月の前月までに済ませておく形です。郵送の場合の期限は次のとおりで、思い立った月にすぐ現金化できるわけではないことが読み取れます。
| 郵送で中途換金するとき | 期限と方法 |
|---|---|
| 必要書類の提出 | 換金したい月の前月15日までの消印 |
| 意思の確認 | 前月20日までに不備なく完了。中途換金の意思と金額と理由が分かる総会議事録や理事会議事録等を出すか、代表者以外の会計担当役員等が機構から電話を受ける |
| 振込 | 機構の審査と承認を経て、原則として希望月の10日 |
Web申込サービスの場合は、換金を希望する月の前月20日までに、申請と不備のない確認手続を終えます。
受け取れない期間もあります。第2回から第10回の購入分は、その債券の発行から2か月以内。各債券が満期を迎える年の2月も同じです。支払われるのは、1口につき50万円の中途換金額と経過利息。経過利息は直前の利息受取日の翌日から中途換金時までを月割で計算し、現在の税率では15.315%が源泉徴収されます。年ごとの利率は前半が低いので、早い時期の換金ほど利息は薄くなります。
継続して購入している場合、一部だけ換金するときは購入時期の古い債券から順になります。新しい購入分を指定することはできません。
いまの制度では、この債券を満期前に資金化する方法は中途換金だけです。第三者へ譲渡することも、質権を設定して資金を借りることもできません。
この点について、機構が制度の拡充を検討していると報じられています。マンション管理新聞によれば、満期の元本と利息をその年度の購入費用に充てる「連続積み立て」と、急な修繕等のときに中途解約せず債券に質権を設定して融資を受けるオプションが想定されている、とのことです。ただし正式な発表ではなく、業界紙が来年度にもと報じている段階。中身も時期も動きうるものとして見ておき、今年度の判断はいまの条件だけで決めれば足ります。
うちは買えるのか、いくらまで買えるのか
対象になるのは、区分所有建物である分譲マンションの管理組合です。賃貸マンション、非住宅部分のみを対象とするマンション管理組合、沖縄県内に所在するマンションは対象になりません。そのうえで全商品に共通する応募要件が四つ、制度のうえで応募できる上限の決め方も定まっています。
管理規約、長期修繕計画、前年度の決算書、今年度の予算書を使えば、主なところは理事会で一次確認ができます。これに加えて、反社会的勢力と関係がないこと、機構融資を利用して共用部分の修繕工事を行う予定があることも確かめます。決定権限や代表権の確認書類の読み方で判断が分かれそうなときは、機構や管理会社、専門家に確かめます。
| 全商品に共通する応募要件 | 読み方 |
|---|---|
| 管理規約が定められていること | ― |
| 長期修繕計画の計画期間が20年以上であること | 計画を作成した時点からの期間で見ます。応募日から先に20年残っている必要はありませんが、応募日に計画期間の中にいることは確かめます。更新しているなら、更新前と更新後を合算して20年以上あれば足ります |
| 反社会的勢力と関係がないこと | ― |
| 機構融資を利用し、共用部分の修繕工事を行うことを予定しているマンション管理組合であること | 結果的に機構融資を受けずに共用部分の修繕工事を行うことになっても、違約金などは発生しないと機構が明記しています |
四つ目は読み違えやすい要件です。機構が示しているのは、応募の時点でその予定があること、そして結果的に融資を受けずに工事を行っても違約金などは発生しないこと。この二点だけです。
制度のうえで応募できる上限は、マンション全体の1年あたりの修繕積立金額に、前年度決算における修繕積立金会計の残高を加えた金額の範囲内です。この残高は各科目の残高を合計して借入金額を除いた額だと機構が定義しています。決算書と予算書があれば、その場で目安が出ます。
ただし、いま出した額は制度のうえで応募できる最大額であって、その組合が買ってよい額ではありません。候補額を考えるときは、大規模修繕の予定だけでなく、設備の更新、日々の小規模修繕、突発的な不具合への備えも見込みます。それらの先に残る分が、はじめて候補です。
上乗せを受けるには、応募日の時点で認定等が有効で、期間内の認定通知書や登録証、診断レポートを出せることが条件です。1口あたり10年の受取利息でみると、認定なら通常より5,000円、★4つ以上かS評価なら2,500円多くなります。
制度上の枠から候補額へ絞り込むには、長期修繕計画の数字が要ります。手元の計画書で試すなら長期修繕計画の簡易シミュレーションが使えます。
上乗せの対象になりうるかが気になった方は、管理状況のセルフチェックでいまの状態を見ておくのもよいと思います。認定や評価はすぐ結果が出るものではなく、来年度以降を見据えた点検です。
一回だけにするのか、毎年続けるのか
今年度の一回分と、その先の継続購入は、分けて決めておくほうが整理しやすいと思います。
この債券は、同じ口数で毎年1回、最大10回まで続けて購入できます。ただし2回目以後の分の利率は発行の都度決まるので、今年度の水準が先の分まで続くわけではありません。継続はいつでも中断でき、すでに購入した分を解約する必要もありません。逆に継続の途中で口数を変えることはできず、増減を希望するなら改めて応募手続になります。
各回の債券の満期は、それぞれ発行から10年後です。10回続けた場合、最後の債券が満期を迎えるのは初回の購入から19年後になります。上乗せを受けている場合は、毎年、認定や評価の状況を申し出る手続もあります。見るのは継続購入年度の4月1日時点の状況です。郵送なら、認定すまい・る債は「認定状況に関する申出書」、ステップアップすまい・る債は「評価等状況に関する申出書」を、継続購入年度の10月上旬までに返送します。Web申込サービスなら「認定状況等に関する申し出」を申請します。期限までに手続をしないと、その年度の継続購入ができません。
総会に諮るのか、理事会で決めるのか
どちらになるかは、各マンションの管理規約によります。修繕積立金の取り崩しや運用をどう定めているかで、決定する機関は変わります。
機構が添付書類として挙げているのは「総会議事録(コピー可)等」で、但し書きは「代表権が確認できる書類」。確かめられているのは、申し込む人が組合を代表できる立場かどうかという点です。そのうえで機構は、総会に諮る場合に使える「総会説明用リーフレット」と「総会議案書例」を、編集できるファイルまで含めて公表しています。まずは管理規約を開いて、修繕積立金の取り崩しや運用をどの機関の権限としているかを読んでみてください。総会に諮るなら議案書例が、理事会で決めるならリーフレットが、そのまま下敷きになります。
規約を読んでも、自分たちのケースに当てはめてよいか自信が持てない。そういうときは、当サイトの専門家を探すから、規約の読み方や総会に諮るべきかを相談できるマンション管理士を探せます。何を論点として示すかを整えるところは、外の目を借りたほうが早いように思います。そこまで整理できれば、規約で定められた決定機関に、購入するか見送るかの材料を示せます。
まとめ
- 応募には期限がありますが、書類を出せば終わりではありません。その後の積立申込みと資金の振込まで続くので、誰がどこまでやるかを今月の理事会で決めてください。
- 上がったのは10年分をならした平均で、利息の大半は後半に来ます。しかも元本保証ではありません。表示された平均利率だけで結論を出さず、使う時期、元本の安全性、中途換金の条件、税引後の受取額を分けて確かめてください。
- 対象の条件も応募要件も制度上の上限も、手元の管理規約、長期修繕計画、決算書、予算書で主なところは一次確認できます。ただし、制度上の上限と、その組合が買ってよい額は別のものです。
出典
- マンションすまい・る債(商品TOP)|住宅金融支援機構(商品概要・応募状況・特長と特典)
- マンションすまい・る債 応募手続|住宅金融支援機構(応募要件・応募概要・必要書類)
- マンションすまい・る債受取利息表|住宅金融支援機構(年ごとの利率と受取利息額)
- マンションすまい・る債のご案内(全体版)|住宅金融支援機構(PDF)(継続購入・中途換金・上乗せの条件)
- 【参考】総会議案書例(マンションすまい・る債の購入)|住宅金融支援機構(PDF)(元本保証に関する記載)
- マンションすまい・る債のご案内(Web申込サービス用)|住宅金融支援機構(PDF)(新規利用登録・代行入力・債券積立申込み・Webでの中途換金と認定状況等の申し出)
- マンションすまい・る債のご案内別添チラシ(2026年度版)|住宅金融支援機構(PDF)(応募から発行までの日程・税率に関する注意書き)
- 「連続積み立て」可能に マンションすまい・る債 来年度にも 制度拡充へ|マンション管理新聞(2026年8月5日・3面)(制度拡充の検討。無料で読める範囲のみ参照)
制度・条件の確認日:2026-09-11
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合のみなさまと信頼できる専門家をつなぐ、マンション管理士コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。



