段階増額のままにするか、均等積立に切り替えるか──国が示した引上げの考え方と、切替で動く月額
段階増額積立方式のままにするか、均等積立方式に切り替えるか。国が示した引上げの考え方と、切り替えたときに月額がどう動くのかを、前提を置いて計算しながらたどります。決めるのは総会ですので、理事会が議案を組み立てるための材料としてお読みください。

管理組合の相談コンシェルジュ、フクロウのコネルです。
分譲時に決まった修繕積立金が、数年おきに少しずつ上がっていく。そういう決め方をしているマンションは、めずらしくありません。当初の負担額を抑え、後から段階的に増額していく設計です。けれど理事になって長期修繕計画を開くと、これから先の値上げの幅が思っていたより大きいことに気づきます。
そこで出てくるのが、このまま段階的に上げるのか、毎月同じ額を積む形に切り替えるのか、という問いです。国はこの二つの積み方について、どちらが望ましいか、段階的に上げるならどう考えるかを示しています。
ただ、それだけでは自分のマンションで毎月いくら動くのかは見えません。積み方の違いから、切替後の月額と決め方までをたどります。
段階増額と均等積立は、何が違うのか
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」は、積立方法として二つを挙げています。長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を計画期間中に均等に積み立てる方式が均等積立方式、当初の積立額を抑え段階的に積立額を値上げする方式が段階増額積立方式です。ほかに、購入時の基金や修繕時の一時金、借入れを前提とした方式もあります。集め方の比較は値上げ・一時金・借入れの3択にゆずります。
同じ修繕計画と同じ総額を前提に比べると、大きな違いは、負担をいつに置くかです。段階増額積立方式は、将来の増額を前提にした積み方です。実際に増額のたびに新たな総会決議が必要になるかは、現在の規約や過去の総会決議で、将来の増額をどこまで決めているかによります。
ガイドラインもそこを注意点にしています。将来の負担増を前提とする積立方式は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じていることに留意が必要です、という書き方です。そのうえで、安定的な積立てを確保する観点からは均等積立方式が望ましい方式といえる、と結んでいます。決まらないまま次の期へ渡された議案が、輪番のたびに重くなっていくのと似た構図です。
国は、段階増額の「適切な引上げ」をどう示しているのか
比べる相手になるのは「基準額」です。計画期間中に集める修繕積立金の総額を、全戸の専有面積の合計と、計画の月数で割りならした額。1㎡あたり月いくら、という数字です。㎡単価の水準そのものを自分のマンションに当てはめる手順は、ガイドラインの目安と当てはめ方で扱っています。
この基準額と、計画のなかでいちばん低い月額・高い月額を見比べる、というのが示された考え方です。低いほうは基準額の0.6倍を下回らない、高いほうは1.1倍を超えない。出発点を下げすぎず、到達点を上げすぎない、という二つの歯止めです。
もとになる総額は「修繕工事費の総額」ではなく、計画期間中に修繕積立金として集める総額です。この基準額はこれから徴収する分だけをならした額で、残高や専用使用料等からの繰入れも足して国の目安表と比べる平均額とは別の数字です。
読み違えやすいのは倍率の相手です。この範囲は、現在の徴収額から何倍まで値上げできるかではありません。長期修繕計画から計算した基準額と、計画上のいちばん低い月額・高い月額を比べるものです。ガイドラインにも、工事費高騰等の状況を踏まえた計画の見直しにあたって現在の額を大幅に引き上げることを制限するものではない、という留意事項が添えられています。
いま切り替えると、毎月の負担はどう変わるのか
計算の流れが見えるように、仮のマンションを置いて試算します。実在の物件ではありません。長期修繕計画を見直し、その初年度から均等積立方式に切り替える場面です。現在の残高や他の収入を織り込んだうえで、これから集める総額が決まった、という仮定を置きます。
| 項目 | 試算の前提 |
|---|---|
| 切替の時点 | 見直し後の長期修繕計画の初年度 |
| 見直し後の計画期間 | 30年・360か月 |
| 総戸数 | 120戸 |
| 各住戸の専有面積 | 全戸70㎡ |
| 総専有床面積 | 8,400㎡ |
| これから計画期間中に集める総額 | 816,480,000円 |
| 基準額(総額を総専有床面積と計画月数で割りならした額) | 1㎡あたり月270円 |
| 均等積立方式にした場合の住戸別月額 | 70㎡で月18,900円 |
※ 総額は、計算を説明するために置いた仮の値です。この金額で修繕資金が足りると判定した例ではありません。住戸別の負担は専有面積に比例するものとしましたが、実際は管理規約で定めた負担割合によります。
現在の徴収額が異なる場合に、月額の差がどう変わるかを並べました。各行は別々の仮定で、段階増額の年次計画を示したものではありません。
| いまの徴収額 | ㎡単価(円/㎡・月) | 70㎡の月額(円) | 見直し後の計画を均等にした月額(円) | 差(円) |
|---|---|---|---|---|
| 基準額の0.5倍 | 135 | 9,450 | 18,900 | +9,450 |
| 基準額の0.6倍 | 162 | 11,340 | 18,900 | +7,560 |
| 基準額の0.8倍 | 216 | 15,120 | 18,900 | +3,780 |
※ 表の数字は丸めていません。この例で基準額の1.1倍に当たる水準は、1㎡あたり月297円、70㎡なら月20,790円です。
この表は、見直し後の計画に基づく均等月額と、現在の徴収額を比べたものです。 実際の切替額は、現在の積立金残高、今後の工事費、専用使用料等からの繰入れなどによって変わります。過去に低い額で集めていたという理由だけで、この例より高くなるとは決まりません。
自分の数字で同じ計算をすると、たいてい「総会でどう説明するか」で手が止まります。詰まったときは専門家を探すから、計画と資金の両方を見られる人に相談する道もあります。案を比べる根拠や、工事の支払時点で資金が足りるかを確認する材料を出してもらう相手です。
いますぐ均等にしないといけないのか
ガイドラインは段階増額積立方式について、築年数の経過に応じて必要な修繕積立金が増加することや、区分所有者の高齢化等により費用負担が困難化していくことを踏まえ、早期に引上げを完了させることが望ましい、としています。上げにくくなる前に上げ終えておく、ということです。
では、いつ手をつけるか。どのような積立方法でも、定期的(5年程度ごと)に長期修繕計画を見直し、修繕積立金を設定し直すことが必要だとされています。切替の議論は、この見直しに合わせるのが自然です。
均等積立にすると、困ることはないのか
均等積立方式にも留意点があります。修繕資金需要に関係なく均等額の積立金を徴収するため、段階増額積立方式に比べ、多額の資金を管理する状況が生じる、とされています。まとまった資金をどこに置いておくかという話がついてきます。
誤解されやすい点がもうひとつ。均等積立方式を採用した場合であっても、その後の長期修繕計画の見直しによって増額が必要となる場合もある、とされています。
切り替えは、誰がどう決めるのか
先に確かめたいのは、自分のマンションで額をどこに定めているかです。マンション標準管理規約(単棟型)は第25条で、区分所有者は管理費と修繕積立金を管理組合に納入しなければならないと定め、管理費等の額については各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする、としています。額そのものは規約本文にありません。標準どおりなら、額の変更は総会の議決事項です。
ただし、規約の一部を構成する別表に住戸ごとの額を書き込んでいる管理組合もあります。その場合、額を動かすことは規約の変更にあたり、決議の要件が変わります。まずは規約を開いて、額がどこにあるかを確かめるところからです。
長期修繕計画と修繕積立金の額は、つながっています。ただし標準管理規約では別々の総会議決事項なので、同じ総会で扱う場合も、計画と月額のそれぞれが分かる形にしておくと説明しやすくなります。
| 何を決めるか | 標準管理規約での位置づけ | 決議の要件 |
|---|---|---|
| 長期修繕計画の作成又は変更 | 第48条第五号 | 出席組合員の議決権の過半数 |
| 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法 | 第48条第六号 | 出席組合員の議決権の過半数 |
| 修繕積立金の保管及び運用方法を変更する場合 | 第48条第七号 | 出席組合員の議決権の過半数 |
| 規約の制定、変更又は廃止 | 第48条第一号 | 出席組合員及びその議決権の各4分の3以上(第47条第3項) |
総会の会議は、議決権総数の過半数を有する組合員の出席が要件です。規約の変更は、これに組合員総数の過半数の出席も加わります。ここでいう出席には、書面や代理人による議決権行使も含まれます。なお標準管理規約はひな型です。実際の手続きは、自分のマンションの規約と、現在適用される区分所有法の両方に照らして確かめます。
切替内容を決めるのは総会、つまり区分所有者です。理事会は、見直し後の計画と住戸ごとの月額、変更を始める時期、段階増額を続ける場合の各時期の負担を整理し、議案を用意します。決議のあとは、その内容に沿って徴収額の変更などの準備を進めることになります。
よくある質問
Q. 段階増額のままでも、示された範囲に収まっていれば問題ないのでしょうか。
それだけでは判断できません。0.6倍・1.1倍は、段階増額の上げ方を、自分の長期修繕計画から算出した基準額と比べるための考え方です。基準額のもとになっている工事費や修繕周期が現状に合っているか、現在の積立金残高を含めて計画期間中の資金が不足しないかは、別に確認する必要があります。計画期間全体の収支が合っていても、資金が集まる前に大きな支払いが来れば足りません。そのうえで、予定している増額について、どこまで総会で決まっているのか、今後どのような合意形成が必要なのかを確認していきます。
Q. 均等積立方式にすれば、もう値上げの議案を出さなくてよくなりますか。
そうはなりません。均等積立方式は、今の長期修繕計画に基づいて、毎月の積立額をそろえる方式です。将来の工事費まで固定するものではないので、計画を見直した結果、月額の変更が必要になることはあります。
まとめ
- ガイドラインは、安定的な積立てを確保する観点からは均等積立方式が望ましいとしています。
- 段階増額を続ける場合の引上げは、基準額と、計画上のいちばん低い月額・高い月額を比べます。現在の徴収額から何倍まで上げられるか、という話ではありません。
- 切替後の月額は、現在の積立金残高や今後の工事費などを踏まえ、見直し後の長期修繕計画に基づいて計算します。
- 均等積立方式にも、多額の資金を管理する状況が生じることや、見直しで増額が必要になる場合があります。
- 標準どおりの規約なら額の変更も計画の変更も総会の議決事項、規約の一部である別表に額があるなら規約変更の手続きです。
数字を出すところまでは、手順どおりに進めれば理事会でもたどれます。むずかしいのはその先、どの案を総会に出すかを選ぶところです。いっしょに、よい答えを見つけよう。
出典
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定/令和6年6月改定)(PDF)/「4 修繕積立金の積立方法について」
- 国土交通省住宅局「マンションの修繕積立金に関するガイドライン 新旧対照表」(令和6年6月7日)(PDF)/段階増額積立方式における適切な引上げの考え方(ガイドラインでは、この記事でいう基準額をD、計画上のいちばん低い月額をE、高い月額をFと表記しています)
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)(PDF)/計画期間の設定、見直し、修繕積立金の額の設定
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及びマンション標準管理規約(単棟型)コメント」(令和7年10月17日改正)(PDF)/第25条、第47条、第48条
- 国土交通省「令和7年改正マンション標準管理規約を踏まえた管理規約の改正を行う場合の手続の留意点について」(PDF)
制度・条件の確認日:2026-09-09
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合のみなさまと信頼できる専門家をつなぐ、マンション管理士コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。



