修繕積立金は足りているのか──国のガイドラインの目安と、自分のマンションを当てはめる手順
コネルです。修繕積立金が足りているかは、国のガイドラインの目安と比べると見当がつきます。どの書類から数字を拾い、どう当てはめるのか。そこから何が読み取れて、何は読み取れないのかまで整理しました。

管理組合の相談コンシェルジュ、フクロウのコネルです。
「うちの修繕積立金は、少ないのだろうか」。理事会でこの話題が出ても、その場で答えを持っている人はなかなかいません。管理会社に聞けば見解は返ってきますが、理事会として自分たちの位置も把握しておきたいところです。
国土交通省のガイドラインには、専有面積あたりの目安が示されています。手元の書類をいくつか開けば、理事会だけでも当てはめられます。何が読み取れて何が読み取れないのかも含めて、順番にいっしょに見ていきましょう。
目安と比べると、何が分かるのか
目安のもとになっているのは、実際に作られた長期修繕計画を数百件集めた分析です。集計したのは、各マンションが実際に集めている額ではありません。計画上の修繕工事費の総額を計画期間で積み立てると専有面積1㎡あたり月いくらになるか、という換算値です。平均値と「事例の3分の2が包含される幅」が併記されているのは、ばらつきが大きく平均値だけでは実態が伝わらないからです。
この幅は、合格ラインではありません。修繕積立金の額がこの幅に収まっていないからといって、直ちに不適切であると判断されることになるわけではない。ガイドラインにそう明記されています。外れていること自体は不足の証明ではなく、理由を確かめる合図です。
裏を返せば、幅の中に入っていることも安心の証明にはなりません。同じ規模でも、設備や外構、建物の形状は違います。目安との比較は、計画の中身を読む入口です。
自分のマンションの数字は、どこを見れば出せるのか
1. 建物の規模と階数を確認する。 目安の表は、地上階数と建築延床面積で区分されています。竣工図書や建築確認の書類、管理規約の冒頭にある建物の表示で分かります。
2. 総専有床面積を出す。 管理規約の別表にある住戸ごとの専有面積を合計します。区分に使う建築延床面積と、割り算に使う総専有床面積は別物です。共用廊下や階段、管理事務室が入るかどうかが違います。延床面積をそのまま使うと、単価が小さく出ます。
3. 機械式駐車場の形式と台数を押さえる。 形式によって加算額が変わります。管理規約の別表、駐車場使用細則、保守点検の契約書が手がかりです。
4. 計画期間全体でならした金額を出す。 ガイドラインは、毎月の徴収額ではなく計画期間全体の平均額で比べる考え方を示しています。
Z =(A + B + C)÷ X ÷ Y
| 記号 | 中身 | よく載っている書類 |
|---|---|---|
| A | 計画期間当初における修繕積立金の残高(円) | 長期修繕計画書の資金計画表 |
| B | 計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円) | 長期修繕計画書の資金計画表 |
| C | 計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額(円) | 長期修繕計画書、駐車場使用料等の繰入に関する総会決議 |
| X | マンションの総専有床面積(㎡) | 管理規約の別表 |
| Y | 長期修繕計画の計画期間(ヶ月) | 長期修繕計画書 |
A・B・C・Yは同じ版の計画から取り、Xもその計画が前提にしている総専有床面積にそろえます。版が混ざると、期間の合わない数字を割ることになります。
Cは、駐車場使用料などの総収入ではありません。管理に要する費用に充てる分を差し引いて、修繕積立金会計へ繰り入れる額です。該当する繰入れがなければ0です。空き区画の状況で動くので、計画上の額が今の稼働と離れていないかを見ておきましょう。
Aは計画が始まった時点の残高で、現在の残高ではありません。基準日を確かめずに最新の残高を入れないようにします。Zはこの期首残高も分子に含むため、毎月の請求額とそのまま一致するとは限りません。
長期修繕計画書が見当たらないなら、その存在と作成時期の確認からです。計画がなければB・C・Yが確定できず、Zは出せません。
目安の表は、どう読むのか
左の2列で自分の行を特定し、右の幅と平均値を読みます。
専有床面積あたりの修繕積立金の額の目安(機械式駐車場を除く)
| 地上階数 | 建築延床面積 | 事例の3分の2が包含される幅(円/㎡・月) | 平均値(円/㎡・月) |
|---|---|---|---|
| 20階未満 | 5,000㎡未満 | 235〜430 | 335 |
| 20階未満 | 5,000〜10,000㎡未満 | 170〜320 | 252 |
| 20階未満 | 10,000〜20,000㎡未満 | 200〜330 | 271 |
| 20階未満 | 20,000㎡以上 | 190〜325 | 255 |
| 20階以上 | -(区分なし) | 240〜410 | 338 |
この表は機械式駐車場を除いた水準です。ガイドラインは、機械式駐車場の修繕工事費を駐車場使用料収入で賄う場合には加算は不要としています。駐車場の修繕工事費や使用料を管理費・修繕積立金と区分して経理している場合などです。どちらの扱いかは予算書・決算書、管理規約、長期修繕計画で確かめ、はっきりしなければ管理会社に確認しましょう。
加算が要るなら、次の表の1台あたり月額に台数を掛け、総専有床面積で割ります。足す先は比べる相手である目安の単価で、自分のZに足すのではありません。
機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費
| 機種 | 1台あたり月額(円) |
|---|---|
| 2段(ピット1段)昇降式 | 6,450 |
| 3段(ピット2段)昇降式 | 5,840 |
| 3段(ピット1段)昇降横行式 | 7,210 |
| 4段(ピット2段)昇降横行式 | 6,235 |
| エレベーター方式・垂直循環方式 | 4,645 |
| その他 | 5,235 |
機種が混在するなら、機種ごとに1台あたり月額×台数を出し、合計を総専有床面積で割ります。台数が多いほど、加算の影響は大きくなります。
比べる相手の水準は、住戸に置き換えるとどうなるのか
㎡単価では実感が湧きにくいので、仮のマンションで置き換えます。以下は記事で置いた前提で、実在の物件ではありません。
前提
| 項目 | 置いた値 |
|---|---|
| 地上階数 | 10階(20階未満) |
| 建築延床面積 | 12,000㎡(表の「10,000〜20,000㎡未満」の行) |
| 総戸数 | 120戸 |
| 住戸の専有面積 | 70㎡(全戸が同じ広さと置いた) |
| 総専有床面積 | 8,400㎡(120戸 × 70㎡。建築延床面積とは別物) |
| 機械式駐車場 | 3段(ピット1段)昇降横行式 40台(使用料収入で賄わず、加算が要る側と置いた) |
国の目安を70㎡に換算した参考額
| 位置 | 加える前の㎡単価(円/㎡・月) | 加えた後の㎡単価(円/㎡・月) | 70㎡の月額(加算後・円) |
|---|---|---|---|
| 幅の下端 | 200 | 約234 | 約16,400 |
| 平均値 | 271 | 約305 | 約21,400 |
| 幅の上端 | 330 | 約364 | 約25,500 |
注:加算単価は 7,210円 × 40台 ÷ 8,400㎡ = 約34.3円/㎡・月(検算:7,210×40=288,400円、288,400÷8,400=34.33…)。70㎡の月額は百円単位で丸めています。
これは目安を住戸の広さに置き換えた参考額です。自分のZでも、実際の徴収額でも、この住戸にふさわしい額でもありません。それでも駐車場40台の加算だけで、70㎡あたり月2,000円台の差が出ます。
自分のZをこの水準と並べれば位置は分かりますが、なぜその位置なのかは書類を読む作業です。工事項目や周期、資金計画の立て方、合意形成。こうした論点なら、マンション管理士など第三者の専門家に読んでもらう手もあります。専門家を探すから相談先を探せます。建物や設備の劣化診断は別の作業なので、依頼先はそれに応じて選びます。
目安を下回っていたら、次にどこを見るのか
いきなり値上げ幅の話に進む前に、確かめたいところがあります。
長期修繕計画の期間。 期間が短いと、周期の長い工事が期間の外に出てしまい、Zが低く見えることがあります。長期修繕計画作成ガイドラインは、計画期間を30年以上でかつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上としています。見直しは5年程度ごとです。
工事項目の範囲。 外壁や屋上防水は入っていても、抜けている費目があります。共用部分の給排水管の更生・更新、エレベーターの更新、機械式駐車場の更新などです。見るのは「修繕積立金で賄う計画なのに抜けていないか」です。駐車場会計で賄う場合は、本体の計画に載っていないことがあります。抜けた項目は必要額に乗らず、単価が低く出る理由になります。
残高と計画の整合。 Zの分子には計画開始時の残高が入るので、そこが厚ければ月々の徴収額が控えめでもZは上がります。今の残高が計画上の想定と乖離していないかも確認材料です。
積立方法。 段階的に引き上げていく方式なら、令和6年6月の改定で「適切な引上げの考え方」が示されました。基準になるのは、計画期間中に集める修繕積立金の総額を、総専有床面積と計画期間でならした額です。ここまで出してきたZとは別の数字で、期首の残高も専用使用料等からの繰入も入りません。この基準額に対して、計画の初期額は0.6倍以上、最終額は1.1倍以内に収める、というのが示された考え方です。初期額・最終額は、計画期間中の1㎡あたり月額の最低額・最高額です。早い段階で引上げを終えて均等積立方式へ移す趣旨です。見直し時の大幅な引上げを制限するものではない旨の但し書きも付いています。0.6倍・1.1倍は法令の下限や上限ではなく、範囲に収まっているかだけで適否が決まるわけでもありません。
不足が残るという結論に理事会として至れば、値上げ・一時金・借入れという資金の集め方の議論に移ります。3つの選択肢の比べ方は【値上げ・一時金・借入れ】マンション修繕の3つの選択肢で扱っています。
改定で変わったのは、目安の金額なのか
令和6年6月の改定で変わったのは、前の見出しで触れた段階増額積立方式の引上げの考え方です。専有面積あたりの目安の単価表は見直されておらず、数値は据え置かれています。
据え置きは、最新の工事価格を反映した新しい単価表になったという意味ではありません。改定では、修繕積立金の額に影響する要因として、従来の技術開発に加えて工事費の高騰等が挙げられるようになりました。実際にいくらかかるのかは、目安の表ではなく自分の長期修繕計画で確かめます。計画時点と現在で工事費の前提がずれていないかは、見直しの検討材料です。
このガイドラインは新築マンションの購入予定者だけでなく、既存マンションの区分所有者や管理組合も対象です。長期修繕計画そのもののガイドラインも、同じ時期に改定されています。変更点は【令和6年改訂】長期修繕計画ガイドラインが変わった!で整理しました。
よくある質問
Q. 毎月の請求額をそのまま目安と比べてもよいのでしょうか。
比較の対象は、計画期間全体をならした1㎡あたりの月額(Z)です。Zには計画開始時の残高や専用使用料からの繰入も含まれます。請求額だけで比べると、残高の厚いマンションほど実態より低く見えます。
Q. 総専有床面積が分からないときは、どうすればよいでしょうか。
管理規約の別表に住戸ごとの専有面積が載っているのが一般的です。管理会社やマンション管理士に確認し、正しい数字を押さえてから計算するほうが、後の議論が安定します。
まとめ
ガイドラインの目安は、自分の位置を測る物差しです。長期修繕計画から数字を拾ってZを出し、該当する行と並べるところまでは、理事会でもできます。
ずれた理由を読むには、計画の中身と建物の状態を突き合わせます。計画の変更や積立金の額の変更は、各マンションの管理規約に沿って総会に諮ります。理事会は議案と資料を用意する立場、専門家は判断材料を出す立場、私は案内役です。いっしょに、よい答えを見つけよう。
出典
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定/令和6年6月改定)本文(PDF)
- 国土交通省住宅局「マンションの修繕積立金に関するガイドライン 新旧対照表」(令和6年6月7日)(PDF)
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)(PDF)
制度・条件の確認日:2026-09-08
管理規約の見直し
この判断を進めるとき、規約が旧法のままになっていませんか
修繕・お金・運営の判断は、最終的に総会決議と管理規約の条文で決まります。改正区分所有法(2026年4月1日施行)で決議要件や手続きが変わったため、規約側の確認も合わせて進めるのが安全です。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合のみなさまと信頼できる専門家をつなぐ、マンション管理士コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。



