修繕積立金の運用細則には何を書くのか──実際の細則から、理事会が案をつくる前に確かめること
修繕積立金の運用方針を、細則として検討する例があります。何を書くかは公開されている細則が手がかりになりますが、その前に、規約本文・細則・総会決議のどこで、だれが決める組合なのかを確かめる必要があります。実例をもとに、項目と案のつくり方を整理します。

修繕積立金の運用を考える組合で、方針を「細則」の形にまとめようとする例があります。管理組合の顧問をしている人が、こんな投稿をしていました。
顧問先の修繕積立金の運用細則の委員会をネット会議で7時から。債券運用のプロみたいな人ばかりきてた
団地型規約なんだけど一元管理じゃなくて棟別の積立金運用が、棟総会の決議になってるから、全体で細則作っても棟には及ばないのでは?とか前回コメントしたのには対応できてた
投稿が描いているのは、運用の細則を検討する委員会の場面です。どんな細則になったかまでは書かれていません。それでも、細則の中身を考える前に、その積立金の運用を規約のうえでどこが決めることになっているかを確かめる必要があることは、この指摘から読み取れます。
管理組合の相談コンシェルジュをしているフクロウのコネルです。運用を話し合う理事会では、「細則を作ったほうがよいのか」「作るなら何を書くのか」が、やがて論点になります。
この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。
- 運用のルールは、規約本文・細則・総会決議のどこに置くかで、決め方と変えやすさが変わること
- 細則には、対象のお金、運用先と条件、上限、預け先、売買の手続き、報告と見直しを書き、今回確かめた公開例では期間や上限の数字まで定めていること
- 案は理事会が専門委員会の検討も受けてまとめ、自分たちの規約が定める場で決めたうえで、金融機関や組合員に根拠として示せる形で保管すること
公開されている細則で項目を見たあと、自分たちの規約で決める場を確かめ、最後に案のつくり方を順に整理します。
運用細則には、何が書かれているのですか
この記事でいう「運用細則」は、修繕積立金の保管及び運用方法を、続けて使う決まりとしてまとめた細則のことです。国のひな形である標準管理規約は、会計処理などについて別に細則を定めることができるとしていますが(70条)、運用する商品、期間、格付け、上限などを具体的に定めた条文も、専用のひな形もありません。作るかどうかも含めて、組合ごとに決めることです。
公開されている例の一つが、千葉県富里市の日吉台共有施設管理組合の「資金の運用及び管理に関する細則」です。平成26年に制定され、令和5年までに5回改正されています。下の表は、一つの公式な分類ではなく、この細則と国の資料に出てくる項目を並べたものです。「ひとことで言うと」の列は、コネルが補いました。
| 書く項目 | 中身 | ひとことで言うと | 日吉台の細則の主な内容 |
|---|---|---|---|
| 対象のお金 | 運用の対象にする資金の範囲 | どのお金の話か | 施設の修繕積立金、維持管理費、繰越金、基金 |
| 基本方針 | 何で運用し、どれだけ手元に残すか | 考え方の軸 | 債券と預金で運用し、普通預金は支払いに必要な額にとどめる |
| 運用先と条件 | 商品の種類、償還(お金が戻ること)までの期間、格付け(発行体の信用度の評価) | 買ってよいものの線 | 国債は償還まで10年以内。地方債は、原則として都道府県・政令市の5年以内の公募債(広く投資家を募って出す債券)で、国債と同等かそれに準ずる格付けのもの(募集がない場合の例外あり)。政府保証債と地方金融機構債も10年以内 |
| 上限と分散 | 期間の長いものの割合、一つの預け先に置く額 | 偏らせない工夫 | 償還まで5年を超える債券は、債券と預金の合計の2分の1まで(残りの期間で判断)。定期預金は原則として各店舗に元本1,000万円、1年以内(普通預金が多いときの例外あり) |
| 預け先 | 口座を開く金融機関 | どこに置くか | 別表で指定し、追加や廃止は理事会の承認 |
| 売買の手続き | だれが決め、どう承認するか | 動かすときの手順 | 購入を含む運用は、規約で理事会の事前の承認が要る。債券を売るときも、細則で理事長が理事会の承認を得る。会計担当理事が理事会に諮るときは、決まった様式を使う |
| 報告と見直し | いつ、だれに報告し、いつ見直すか | 後から確かめる仕組み | 運用に絞った報告や見直しの条はない。規約には、監事が財産と会計を監査して総会に報告する定めがある |
表の最後の行にも目を向けておきます。改正を重ねてきた細則でも、運用に絞った報告や見直しの時期を書いた条はありません(監査の定めは規約の側にあります)。自分たちで作るときは、この表を点検表として使うと、抜けている項目に気づきやすくなります。
そもそも、うちの組合では、どこで決めることになっていますか
標準管理規約では、修繕積立金の保管及び運用方法も、細則の制定・変更も、総会の決議事項です(48条)。ただ、実際の規約には、理事会に任せる定めや、団地の棟ごとに決める定めもあります。最初に確かめたいのは、自分たちの規約でどこが決めることになっているかです。
どこに書くかで、決め方と変えやすさが変わります。標準管理規約の場合で並べると、次のとおりです(47条)。
| 書く場所 | 決め方(標準管理規約の場合) | 変えるとき | ひとことで言うと |
|---|---|---|---|
| 規約本文 | 特別決議。組合員総数の過半数が出席し、その出席者が議決権総数の過半数を持っていることが必要。そのうえで出席組合員と出席議決権のそれぞれ4分の3以上が賛成 | 同じく特別決議 | だれが決めるかという骨組み |
| 細則 | 普通決議。議決権総数の過半数を持つ組合員が出席し、出席組合員の議決権の過半数が賛成 | 同じく普通決議 | 何をどこまでという、続けて使う決まり |
| 個別の総会決議 | 普通決議 | 決議の内容しだい(一回限りのことも、続けて使う方針のこともある) | 商品、金額、期間、理事会に任せる範囲など |
書面や代理人による議決権の行使は、出席に数えます。規約で認めていれば、電磁的方法による行使も同じです(47条)。
国土交通省が実際の規約から抜き出した事例集には、理事会の決議事項に「管理組合資金の保管及び運用に関する事項」を加えた規約や、「細則の制定、変更又は廃止」を理事会で決める規約が載っています。こうした定めは規約本文に置くので、入れるには特別決議が必要です。任せる範囲を広げるときは、何をいつ総会に報告するかも合わせて決めておくと、組合員が後から確かめやすくなります。
団地型にも注意が要ります。標準管理規約(団地型)では、団地全体の修繕積立金と棟ごとの修繕積立金の保管及び運用方法は、団地総会の決議事項です(50条)。一方で、冒頭の投稿の組合のように、棟ごとの積立金の運用を棟総会(その棟の区分所有者で開く総会)で決める規約もあります。全体で作る細則が、どの積立金まで及ぶのかを先に確かめます。
規約に書かれていないことで困る場面の一つが、金融機関から根拠を尋ねられたときです。プラウド北浦和(総戸数57戸)の管理組合は、総会の決議で米国債(為替の動きで円での価値が変わる外国の国債)での運用を始めました。業界団体のインタビューで管理会社の担当者が話したところでは、証券会社から「管理規約に、修繕積立金で米国債を運用できる旨の記載があるか」と確かめられたそうです。明記はなく、規約の総会決議事項にある「修繕積立金の保管及び運用方法」にもとづいて総会で承認済みだと説明し、理解を得ました。担当者は、続けるなら規約の見直しは必要だと感じているとも話しています。
では、細則の案はどう作ればよいのですか
最初に、規約、今ある細則、過去の総会の議事録を集め、運用について決まっていることと決まっていないことを一覧にします。そのうえで確かめるのが、前の章で見た決める場です。単棟型か団地型か、理事会に任せる定めがあるかで、案の出し先が変わります。
検討は理事会で進めるほか、専門委員会を置く方法もあります。標準管理規約では、理事会は専門委員会を置いて課題を調べさせ、結果を報告させることができます(55条)。国のコメントは、検討対象が理事会の責任と権限を超える場合や、理事会の活動に認められた経費を超える費用が要る場合、委員会の運営のための細則(運営細則。資金の運用細則とは別のもの)が要る場合などは、委員会の設置に総会の決議が要るとしています。委員は関心の強い組合員を中心に、必要なら専門知識のある人に加わってもらえるとされています。
中身は、最初の表の項目を一つずつ埋めます。運用に回すお金の上限は、長期修繕計画で支出の時期を見てから決めます(数え方は運用に回せる額の記事で整理しました。全体の流れは長期修繕計画の簡易シミュレーションでもつかめます)。売買をだれが決めるかも書きます。標準管理規約では、規約、使用細則等または総会の決議で理事会の権限とされた業務について、理事会が執行を決めます。理事長は組合を代表してその業務をまとめ、会計担当理事は保管や運用などの会計業務を担います(38条・40条・51条)。細則でも、理事会が決める範囲と、理事長・会計担当理事が行う事務を分けて書きます。プラウド北浦和は、購入も売却も理事会に一任しているそうです。預金口座の印鑑の扱いは、国のコメントが、総会の承認を得て細則等に定めておくことが望ましいとしています。
役員が代わるときの手続きも書いておきます。プラウド北浦和では、証券口座の名義に理事長名を入れる必要があり、理事長が代わるたびに名義変更の手続きが要るそうです。報告は、いつ、だれに、何を出すかを決めます。その時期と資料は、会計の資料も含め、監事が組合の業務の執行と財産の状況を監査できるように決めておきます(41条)。細則を作る前から続いている運用の扱い(日吉台の細則は、前の扱いのままとする経過措置を置いています)と、見直しの時期も、細則に入れておきたい項目です。
案ができたら、使う予定の金融機関に、口座を開くときや買うときに求められる書類を聞いておきます。標準管理規約と同じ決め方の組合では、理事会が細則の案を総会に出す議案として決め、総会が制定を決議します(48条・54条)。組合員が中身を判断できるよう、細則案の全文を総会の資料に載せておくと分かりやすくなります。細則を理事会の決議で定める規約なら、その規約に従います。決めたあとは、現に有効な細則の内容を書いた書面を保管し、区分所有者や利害関係人から請求があれば理事長が閲覧させ、保管場所を掲示します(72条)。
規約の読み方に迷うときや、案に抜けがないかを見てもらいたいときは、マンション管理士などの専門家に相談できます。決める場の確かめ方と、項目の点検を一緒に進められます。専門家を探す
よくある質問
細則がないと、運用は始められないのですか
標準管理規約では、修繕積立金の保管及び運用方法は総会の決議事項です。細則がなくても、総会で運用の方法を決めて始めることはできます。プラウド北浦和も総会の決議で始めました。続けるなら、条件と手続きを細則にしておくと、金融機関や新しい役員に説明しやすくなります。
細則は、理事会だけで決められますか
標準管理規約では、細則の制定・変更・廃止は総会の決議事項で、理事会が決めるのは総会に出す案です(54条)。ただし、細則を理事会で決めると定めた規約もあります。自分たちの規約がどちらになっているかの確認が先です。
団地型で、棟ごとに積立金がある場合はどうなりますか
標準管理規約(団地型)では、団地全体と各棟の修繕積立金の保管及び運用方法を、団地総会で決めます。棟総会で決める規約もあるので、全体の細則がどの積立金に及ぶかを規約で確かめることが大切です。
まとめ
- 運用のルールは、規約本文・細則・総会決議のどこに置くかで、決め方と変えやすさが変わること
- 細則には、対象のお金、運用先と条件、上限、預け先、売買の手続き、報告と見直しを書き、今回確かめた公開例では期間や上限の数字まで定めていること
- 案は理事会が専門委員会の検討も受けてまとめ、自分たちの規約が定める場で決めたうえで、金融機関や組合員に根拠として示せる形で保管すること
決める場を確認して、項目を一つずつしっかり埋めていけば、運用のルールは組合の力で作れます。
出典
- はるぶーさん(@haruboodarkside)のポスト(X、2026年9月9日)/リードの引用
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」(令和7年10月17日改正)(PDF)/第37条第1項、第38条第1項、第40条第3項、第41条第1項、第47条第1項〜第3項・第7項、第48条第一号・第七号、第51条第2項第一号、第54条第1項第二号、第55条とコメント第55条関係①②、第62条とコメント第62条関係、第70条、第72条第4項・第6項とコメント第72条関係③
- 国土交通省「マンション標準管理規約(団地型)及び同コメント」(令和7年10月17日改正)(PDF)/第50条第七号
- 国土交通省「独自の規定を定めている管理規約の事例」(参考資料2)(PDF)/資金の保管及び運用、細則(理事会の議決事項とした例)
- 日吉台共有施設管理組合「資金の運用及び管理に関する細則」(令和5年10月21日改正)(PDF)/第1条〜第13条、附則
- 日吉台共有施設管理組合「日吉台共有施設管理組合規約」(令和8年6月20日改正)(PDF)/第2条、第5条、第35条、第37条、第39条、第51条、第52条
- 不動産テック協会「【インタビュー】修繕積立金運用の実践事例」(2026年2月17日)/プラウド北浦和の管理組合と管理会社への取材
- 金融庁「預金保険制度」/一般預金等の保護の範囲(1金融機関ごとに合算)
制度・条件の確認日:2026-10-08
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。


