修繕積立金の「目安」を見直す案が出た──上がる区分と下がる区分、理事会がいま確かめること
国の検討会で、修繕積立金の目安を最近の長期修繕計画から計算し直した案が示されました。上がる区分と下がる区分、管理計画認定とのつながりを整理し、正式な公表を待つあいだに理事会が確かめておくことを案内します。

国土交通省はこの秋、長期修繕計画のガイドラインを見直す検討会を始め、その資料の中で、修繕積立金の目安を最近の長期修繕計画から計算し直した案を示しました。目安は定期的に見直しを検討することになっていますが、前回の改定では金額が据え置かれていたので、金額そのものが動く案が出たのは久しぶりです。建物の規模によって、上がる区分と下がる区分があります。
管理組合の相談コンシェルジュ、コネルです。この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。
- 示されたのは案で、建物の目安は、20階未満では延床面積の小さい区分で上がり、大きい区分では少し下がり、20階以上では少し上がる方向であること
- 目安の下限は管理計画認定で見られる水準につながっているので、認定を受けている組合や目指す組合は、計画期間全体の平均額と基準との差を早めに確かめておくこと
- 正式な公表は年度末の予定なので、いまは計画期間全体の平均額と計画の前提を確かめ、公表後に比べ直すこと
まず案の中身を見て、次に自分たちの積立金がどのあたりにあるかを確かめ、最後に、いまできることを順番に並べます。
修繕積立金の目安は、どう変わる案なのですか
20階未満では、延床面積1万㎡未満の区分で目安の下限と平均が上がり、1万㎡以上の区分では下限と平均が少し下がる案です。20階以上は延床面積にかかわらず別の区分で、下限と平均が少し上がります。20階未満の区分は、戸数ではなく建築延床面積による分け方です。国は目安について、5年程度ごとに見直しを検討することにしています。いまの金額は令和3年9月の改定のもので、令和6年6月の改定では据え置かれました。検討会は今後も開かれ、ガイドラインなどの公表は令和9年3月ごろの予定です。検討会の議事は非公開で、第1回の議事概要は後日公開とされています。
検討会では、目安のほかにも計画の作り方や認定とのつながりが話し合われています。関係する言葉を、コネルが整理しました。一つの公式な分類ではありません。「ひとことで言うと」はコネルの補足です。
| 呼び方 | 中身 | ひとことで言うと | 出てくる資料 |
|---|---|---|---|
| 修繕積立金ガイドラインの目安 | 長期修繕計画の計画期間全体の積立金の平均額を、専有面積1㎡あたりの月額にした幅と平均 | 似た規模の計画と比べる物差し | 修繕積立金ガイドライン |
| 長期修繕計画作成ガイドライン | 長期修繕計画を作るとき、見直すときの考え方 | 計画の作り方の手引き | 長期修繕計画作成ガイドライン |
| 管理計画認定の基準(積立金の平均額) | 計画期間全体の積立金の平均額が、著しく低くないかを見る基準 | 認定で、積立金が低すぎないかを見るところ | 管理計画認定の基準、事務ガイドライン |
| マンションの将来を見据えた計画 | 建物を何年使うか、計画期間の外の大きな修繕、取壊しの費用までを見通す計画 | ガイドラインへの追加が検討されている考え方 | 検討会の資料 |
案の目安を、次の表にまとめました。単位は専有面積1㎡あたりの月額で、機械式駐車場は含めていません。
| 建物の区分 | 案の幅(事例の3分の2が入る範囲) | 案の平均 | いまの目安からの動き |
|---|---|---|---|
| 20階未満・延床5,000㎡未満 | 260〜475円 | 377円 | 上がる |
| 20階未満・延床5,000〜1万㎡未満 | 220〜370円 | 294円 | 上がる(下限の上がり方がいちばん大きい) |
| 20階未満・延床1万〜2万㎡未満 | 185〜330円 | 262円 | 下限と平均が少し下がる |
| 20階未満・延床2万㎡以上 | 185〜315円 | 251円 | 幅の上下限と平均が少し下がる |
| 20階以上 | 250〜440円 | 345円 | 下限と平均が少し上がる |
そもそも、うちの積立金は目安のどのあたりにありますか
比べるのは、いま毎月集めている額ではなく、長期修繕計画の計画期間全体の平均額です。計画の始めにある積立金の残高、計画期間に集める積立金の総額、駐車場使用料などから繰り入れる総額を合わせ、マンションの総専有床面積(全戸の専有面積の合計)と計画の月数で割りならした額で、1㎡あたり月いくら、という形になります。目安の区分を選ぶときの建築延床面積と、平均額を出すときの総専有床面積は、別の数字です。段階的に積立金を上げていく計画では、いまの月額とこの平均額が大きく違うことがあります。出し方と、いまの目安の表は、修繕積立金は足りているのかで説明しました。
㎡あたりの額では実感がわきにくいので、70㎡の住戸に置き換えてみます。目安の単価に70を掛けただけの額で、その住戸に必要な額でも、実際の徴収額でもありません。20階未満で延床5,000㎡未満の区分では、幅の下限が月16,450円から18,200円に、平均が月23,450円から26,390円に上がる案です。延床5,000〜1万㎡未満の区分では、下限が月11,900円から15,400円に上がります。
目安の下限は、管理計画認定(管理の状態が一定の基準を満たすマンションを、自治体が認定する制度)の基準にもつながっています。認定で見るのは、計画期間全体の積立金の平均額が著しく低くないかどうかです。国の資料は、その基準額が目安の下限になっていると説明しています。ただし、下回るだけで直ちに認定を受けられなくなるわけではありません。専門家が作成した、平均額が著しく低額ではない理由を示す理由書を、認定の申請のときに出して審査を受ける扱いがあります。
認定には有効期間があり、更新のときにも基準で見られます。基準そのものの見直しは管理計画認定の基準が見直されると、何が変わるのかで整理しました。
では、いま何をすればよいのか
最初にするのは、長期修繕計画の最新版と、次の見直しの時期を確かめることです。長期修繕計画は工事の内容や時期、費用を確定するものではなく、おおむね5年程度ごとに見直す前提で作られています。国の資料は、見直しの作業に1〜2年ほどかかるとしています。見直しの費用を市区町村が一部補助していることもあり、探し方は自分のまちの支援を理事会で探す手順で説明しました。
次に、計画を誰がどんな前提で作ったかを確かめます。理事会は長期修繕計画書や管理委託契約書を見て、必要なら、計画を作った管理会社や設計事務所に説明を求めます。国の案でも、作成者と前提(単価や数量の出し方など)をはっきり書くことが論点です。管理委託契約にもとづいて管理会社が作った計画は59.7%で(令和5年度マンション総合調査)、別に頼んだものまで含めると、管理会社が作った計画は約7割とされています。修繕の周期を国の例より延ばしている項目があれば、その理由が書かれているかも確かめます。修繕の履歴と、計画を見直してきた経緯を残しておくことも、国の案の論点の一つです。
そのうえで、計画期間全体の平均額を出し、案の幅と比べてみるのが、次の手順です。いま比べるのは参考としてで、最終版が公表されたら、確定した目安と認定で使う時期を確かめて、比べ直します。手元の計画の数字で将来の収支をつかんでおくなら、長期修繕計画の簡易シミュレーションも物差しの一つです。認定を受けている、または目指すなら、規約や経理も含めて管理状況のセルフチェックで棚卸ししておくと、公表後の当てはめが早くなります。
案だけを理由に積立金を変える必要はありません。ただ、いまの計画ですでに資金の不足が見込まれているなら、公表を待たずに計画の見直しに進みます。いまのガイドラインも、定期的に長期修繕計画を見直し、それにもとづいて積立金を設定し直すことが必要だとしています。実際の決め方を確かめる先は、自分たちの管理規約です。標準管理規約では、長期修繕計画の作成や変更と、修繕積立金を含む管理費等の額は、総会の決議事項です。理事会は計画の前提を確かめ、区分所有者が判断できる材料と議案を用意します。管理会社や専門家は、計画の作成や助言を担う立場です。
ガイドラインに「将来を見据えた計画」を加える案も示されています。決まったことではありませんが、建物を何年使うか、計画期間の外の大きな修繕、取壊しの費用を理事会で話し始める材料にはなります。国の資料が紹介しているのは、全国で初めて管理計画認定を受けた高島平ハイツ(昭和49年築、95戸)の例です。総会で今後30年を超えて使うことを決め、建替えが難しい場合も考えて、将来の解体を見据えた取組を始めました。修繕積立金の一部(年200万円)を災害時の復旧のための積立にし、災害がなければ解体費に充てる考え方で、最後の10年は最低限の修繕費を除いて全額を解体費に充てる方針です。解体の費用の考え方は「建替えれば何とかなる」は、もう前提にできないで説明しました。
計画の前提が読み解けないときや、見直しの進め方に迷うときは、マンション管理士などの専門家に相談する方法があります。計画の見方から相談でき、専門家を探すから相談先を探せます。
よくある質問
目安より低いと、すぐに問題ですか。
すぐに問題とは言えません。目安は計画の事例の分布で、建物の形や設備、修繕の履歴によって必要な額は変わります。ただし認定では、原則として下限と比べ、下回る場合は専門家が作成した理由書を出して審査を受けることになります。認定を受けている、または目指す組合は、計画を見直す機会に差を確かめておくことが大切です。
案のとおりになったら、値上げしないといけませんか。
目安が変わっただけで、値上げが義務になるわけではありません。積立金の額は、自分たちの長期修繕計画で必要な額をもとに、総会で決めます。理事会の役割は、計画を見直して必要な額を確かめ、議案と判断の材料をそろえることです。
大きなマンションで目安が下がるなら、積立金を下げてもよいですか。
目安が下がったことは、積立金を下げてよい根拠にはなりません。必要な額は、自分たちの建物と長期修繕計画で決まります。機械式駐車場がある場合は、建物の目安が下がっても、駐車場の分を加えた水準で確かめる必要があります。管理計画認定では、駐車場の会計があるかどうかにかかわらず加える扱いで、その参考値は、案では上がる方向です。
- 示されたのは案で、建物の目安は、20階未満では延床面積の小さい区分で上がり、大きい区分では少し下がり、20階以上では少し上がる方向であること
- 目安の下限は管理計画認定で見られる水準につながっているので、認定を受けている組合や目指す組合は、計画期間全体の平均額と基準との差を早めに確かめておくこと
- 正式な公表は年度末の予定なので、いまは計画期間全体の平均額と計画の前提を確かめ、公表後に比べ直すこと
公表までのあいだに計画の最新版と前提を確かめておくことが、新しい目安が出たときに落ち着いて当てはめるための準備です。自分たちの計画に、しっかり取り組んでおくことができます。
出典
- 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドラインの見直し等に関する検討会」/第1回(2026年10月9日)の議事次第と配布資料
- 資料1 検討会規約(PDF)/第2条(目的)、第5条(公開)
- 資料3 長期修繕計画作成ガイドラインの見直し等について(PDF)/修繕積立金ガイドラインにおける修繕積立金の額の目安、分析対象事例の概要、修繕積立金の額の参考値(目安)と機械式駐車場の参考値、論点1(作成者や計画の前提等の明示)、論点4、マンションの将来を見据えた計画、将来の解体を見据えた解体費用の確保に向けた取組の例(高島平ハイツ)
- 資料4 検討会スケジュール(PDF)
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(最終改訂:令和6年6月7日)(PDF)/計画期間全体における修繕積立金の平均額の算出方法、機械式駐車場の加算、目安の見直し、長期修繕計画と積立金の見直し
- 国土交通省「マンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」(最終改訂:令和8年3月31日)(PDF)/認定基準(4)⑤と、水準を下回る場合の専門家による理由書
- 国土交通省「マンションの管理計画認定に関する事務ガイドラインQ&A」(2025年10月更新)(PDF)/問24(機械式駐車場がある場合の加算と駐車場会計)
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年10月17日改正)(PDF)/第48条(総会の議決事項)
制度・条件の確認日:2026-10-20
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。


