管理会社が減らしているのは「戸数」なのか──契約終了の報道と公表値のあいだで、理事会が確かめること
小規模マンションの契約終了を伝える日経公式Xの見出しと、会社名を固定した11社の公表値合計の増加は両立します。会社統合の影響と数字から分からないことを整理し、理事会で自分たちの契約を確かめる順番につなげます。
日本経済新聞の公式投稿には、小規模マンションの管理契約が終了する問題を伝える見出しが掲載されています。自分たちのマンションも、次の更新で同じことが起きるのでは。理事会で、そんな不安が話題になることもありそうです。
一方で、管理会社の受託戸数の推移を見ると、増えている会社があります。報道と数字をどう受け止め、自分たちの契約の確認につなげればよいのでしょうか。管理組合の相談コンシェルジュ、コネルです。
この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。
- 管理会社全体の受託戸数と、自分たちのマンションの契約継続を分けて考えること
- 戸数の増加には会社統合の影響もあるため、数字の大きさだけで報道や管理会社の方針を決めつけないこと
- 契約書と業務の別表、これまでの協議の記録をそろえ、更新前に確かめたいことを理事会で整理すること
まず公開データが数えているものを見て、報道との関係を整理します。そのうえで、理事会が手元の書類で確かめる順番を考えます。
受託戸数が増えたという数字は、何を数えていますか
今回比べたのは、2020〜2026年の間に一度でも上位10社へ入った11社名の、総合管理受託戸数です。「受託戸数」は、管理会社が管理を引き受けている分譲マンションの住戸数を指します。資料では、管理業務の一部だけを引き受ける「部分管理」と賃貸管理を除いています。会社単体として掲載された数値を使い、合人社グループなどのグループ合計は加えていません。
不動産流通推進センターの統計集と合人社計画研究所の公開表から、各年3月末の数値をそろえました。2020年と2026年を同じ11社で比べると、次のようになります。
| 比べる時点 | 固定11社名の公表値合計 |
|---|---|
| 2020年3月末 | 3,097,711戸 |
| 2026年3月末 | 3,493,883戸 |
| 両時点の差 | 396,172戸増 |
2020年3月末から2026年3月末までの6年間で、約39.6万戸、約12.8%の増加です。毎年の上位10社をそのまま足した比較ではありません。初めは10位圏外だった会社と、後に圏外になった会社も含め、比較する顔ぶれを固定しています。会社名と各年の公表値は、データストーリーの「データと出典」とCSVで確認できます。
ただし、固定したのは会社名であり、各社の事業範囲ではありません。396,172戸は、会社統合などによる集計範囲の変化を含む公表値の差です。同一の事業範囲で新規受託から契約終了を差し引いた純増戸数ではありません。
データストーリーでは、棒グラフは各年の上位10社、折れ線は比較対象の11社を表示します。自分たちの管理会社を強調すると、期間中の動きを追いやすくなります。収録していない会社との比較には使えません。
小規模物件の解約と、会社全体の戸数増は矛盾しますか
両立します。会社全体の合計が増えたことから、個別の組合で契約が終わる問題を否定することはできません。
会社全体の戸数は、新規受託、契約終了、合併・買収・事業譲渡などを反映した、ある時点の合計です。合計の変化だけでは、それぞれの内訳は分かりません。
実際に、東急コミュニティーは2021年10月1日、コミュニティワンを吸収合併しています。会社の公式発表と統計集の注記で確認できます。東急コミュニティーの掲載値は2021年3月末の341,642戸から、2022年3月末の504,334戸へ増えました。
この差は162,692戸です。ただし、差の全てを合併による移管分とみなすことも、全てを新しい受託とみなすこともできません。合併前の公式発表には、コミュニティワンの2021年3月時点の総合管理戸数として160,683戸が記載されています。戸数を比べるときには、会社の範囲が同じかを確認する必要があります。東急コミュニティーの統合は確認できる一例であり、今回の集計は11社すべての買収・合併・事業譲渡を調整したものではありません。
今回のデータには、受託した物件と解約した物件の一覧、規模別の解約率、契約条件を変えた経緯は入っていません。そのため、「受託戸数が増えたから、公式投稿の見出しが示す問題は誤りだ」とは言えません。また、この集計だけで「撤退ではなく選別が起きている」と原因や方針を断定することもできません。
理事会では、自分たちの契約をどう確かめますか
まず、管理委託契約書と業務内容の別表、直近の理事会議事録をそろえます。ランキングを見て安心したり、見出しだけで会社変更を決めたりする前に、自分たちの条件を言葉にするためです。
契約書では、有効期間、更新の手続き、更新しない場合や途中で終了する場合の定めを見ます。通知の方法や時期がどこに書かれているかも、該当箇所を控えます。他のマンションや標準的な書式の条件を、そのまま自分たちの契約の条件とは扱いません。
業務の別表では、管理員の勤務、清掃の範囲と回数、設備点検、会計や総会の補助などを見ます。条件変更の提案が届いているなら、金額だけでなく、どの仕事や体制が変わる提案なのかを確認します。これは業務を減らす結論を先に決める作業ではありません。
次に議事録や管理会社との書面から、まだ回答がない相談や、次の更新に向けた提案を抜き出します。「何が決まっていて、何が未回答なのか」が見えると、担当者への質問も具体的になります。
契約の読み方や提案の比較で判断に迷う部分は、論点を整理して外部の専門家へ相談する方法もあります。専門家を探すときには、そろえた書類と「どこを確かめたいか」を一緒に伝えると、相談の目的が明確になります。理事会は検討資料を整え、総会で決める事項は自分たちの規約に沿って議案にします。
よくある疑問を、どう整理すればよいですか
大手の戸数が増えていれば、うちも契約を続けられますか
今回の数字からは判断できません。会社全体の増加は、個別の契約継続の約束ではありません。自分たちの契約条件と、管理会社から届いている提案を確認する必要があります。
受託戸数が減った会社は、管理の質が落ちているのでしょうか
戸数だけでは判断できません。今回のデータは管理品質や担当者の対応、組合の満足度を測っていません。増えた会社の品質を保証する数字でもありません。
理事会資料には、どう使えばよいですか
会社全体の推移を知る参考として使い、出典・時点・比較範囲と統合の注意を添えます。自分たちの契約継続を評価する資料とは分けて扱います。細かい数字を追う場合は、アニメーションを公表年で止め、CSVと照らし合わせます。
持ち帰ってほしいことを振り返ります。
- 会社全体の戸数と、自分たちの契約継続を分けて考えること
- 会社統合の影響も踏まえ、戸数だけで報道や会社の方針を決めつけないこと
- 契約書・業務の別表・協議の記録をそろえ、更新前に確かめること
報道と数字のどちらか一方で結論を急がず、手元の書類から確認して、しっかり取り組む。それが、次の協議へ進むための出発点です。
出典
- 日本経済新聞の公式投稿(X)/報道への入口として見出しを確認。有料記事の本文や個別事例は再現していません
- 不動産流通推進センター「2025 不動産業統計集・不動産管理」(PDF)/PDF p.4、表③「企業別分譲マンション管理受託戸数」。2020〜2024年。部分管理・賃貸管理を除く。原出典はマンション管理新聞
- 同「2026 不動産業統計集・不動産管理」(PDF)/PDF p.4、同表。2025年。重複する2021〜2024年も照合
- 合人社計画研究所「業績推移」/2026年3月31日現在の受託戸数ランキング。グループ合計は集計対象外。原出典はマンション管理新聞2026年5月25日第1336号
- 東急コミュニティー「当社グループマンション管理業に関する会社統合について」(PDF)/統合日・方法と、合併前両社の2021年3月時点の総合管理戸数
数値の合計・差・増加率は、上記公表値を収録した同じ11社のCSVから筆者集計。
出典・条件の確認日:2026-10-16
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。


