「町会の倉庫を置かせてほしい」と言われたら──自治会・町内会と管理組合は、どこで線を引くのか
地域の団体から設置の同意や会費の徴収を求められたとき、理事会は何を根拠に判断すればよいのか。管理組合と自治会・町内会は構成員の決まり方から違います。手元の規約と会計を見て、敷地・共用部分に関する話と地域との連絡・調整を切り分ける手順をまとめました。

地域の防災の取り組みは大切なものですが、それが自分の住戸のすぐ前で始まると話は変わります。次の投稿は、自分のマンションで起きたこととして、そうした場面を書いたものです。
防災は大事。 でも自宅の窓前に高さ2.4mの倉庫が建つと言われたら、あなたならどうする?
うちのマンションで実際にあった話。
ある日、管理組合から突然 「町会の防災倉庫を設置するので、同意書に署名をお願いします」 設置場所は、1階にある我が家のベランダの目の前。
「説明」より先に「署名してください」。 その順番に違和感しかなかった。
でもこの話、管理組合だけを責められない。 実は私にも大きな落ち度があった。↓
この投稿が描いているのは、町会が使う防災倉庫を敷地に置く話が、説明より先に同意書への署名という形で住戸に届いた場面です。投稿はこのあとも続きますが、この記事で取り上げるのは、この場面だけです。似た相談は理事会にも持ち込まれます。地域の団体から何かを頼まれたとき、それは管理組合が決めることなのか、それとも別の団体の話なのか。この線引きが曖昧なままだと、会費の集め方でも、物を置く場所でも後から揉めます。管理組合の相談コンシェルジュを務めるコネルが、判断の順番を整理します。
この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。
- 管理組合と自治会・町内会は構成員の決まり方から違う別の団体だと押さえること
- 誰が何を根拠に負担しているかという目で、管理費と自治会費の扱いを確かめること
- 依頼が来たら「敷地・共用部分に関する話」と「地域との連絡・調整」に分けて扱うこと
最初の章で、マンションに関わる団体の顔ぶれを並べます。次の章で、自分たちの規約と会計のどこを見るかを示します。最後の章で、依頼を受けてから対応の方針を決めるまでの順番をたどります。
マンションに関わる組織には、どんなものがあるのか
これは一つの公式な分類ではありません。理事会に話が持ち込まれたときに区別がつくよう、根拠となる資料ごとに並べたものです。
| 呼び方 | だれが構成員になるか | 何をする団体か | ひとことで言うと(コネルの補足) | 出てくる資料 |
|---|---|---|---|---|
| 管理組合 | 区分所有者(住戸などを所有する人)の全員 | 建物、敷地、附属施設を管理する | 区分所有権を取得した時点で全員が入っている団体 | 区分所有法第3条、マンション標準管理規約第6条 |
| 自治会・町内会(市町村長の認可を受けていないもの) | 各団体の規約で定める会員。加入や退会の扱い、個人単位か世帯単位かは団体によって異なる | 地域の親睦、防犯、環境美化などを行う | 住んでいる人が地域ごとにつくる団体 | 各団体の規約(自治会・町内会一般を定義した法律の条文はない) |
| 認可地縁団体 | 区域に住所を有する個人のうち、加入した人 | 地域の共同活動を行い、不動産を団体名義で登記できる | 市町村長の認可を受けて法人格を持った自治会・町内会 | 地方自治法第260条の2 |
| 管理組合の専門委員会 | 理事会が定めた委員。具体的な構成は、規約、細則、設置時の決議で確かめる | 特定の課題を調査・検討し、理事会に報告する。決定はしない | 管理組合の一部であって、外部の団体ではない | マンション標準管理規約第55条 |
管理組合は、建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)第3条に根拠があります。同条は「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し」と定めています。マンション標準管理規約第6条第1項も、区分所有者全員で管理組合を構成すると定めています。区分所有権を取得した時点で全員が構成員になり、入る入らないを各自が選ぶ団体ではありません。
自治会・町内会のうち、市町村長の認可を受けたものは認可地縁団体と呼ばれます。地方自治法第260条の2第1項は、一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体が市町村長の認可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において権利を有し義務を負う、と定めています。総務省の資料では、認可地縁団体は法人格を有し、土地や集会施設などの不動産を団体名義で登記できるとされています。
構成員の決まり方は、ここではっきり分かれます。同条第2項第三号は認可の要件として「その区域に住所を有するすべての個人は、構成員となることができるものとし、その相当数の者が現に構成員となつていること」を挙げています。構成員に「なることができる」と書かれているのであって、全員が構成員になると定めた条文ではありません。区域内の住民に加入義務があるわけではありません。一方で同条第7項は「認可地縁団体は、正当な理由がない限り、その区域に住所を有する個人の加入を拒んではならない」としており、認可地縁団体の側は、正当な理由なく加入を拒むことができません。
そもそも、うちの規約と会費はどうなっていますか
最初に確認する資料は、理事会の手元にあります。管理規約と使用細則と別表・配置図、直近の予算書と決算書と会計帳簿や請求明細、過去の総会議事録と理事会議事録、そして地域の団体との覚書、契約書、申入書。この四つのまとまりを机に出すところから始まります。
まず管理規約で、地域の団体との関わりがどう書かれているかを確かめます。マンション標準管理規約(単棟型・令和7年10月17日改正)第32条は管理組合の業務を並べていて、その第十一号が「官公署、町内会等との渉外業務」です。渉外業務とは、外部との連絡や調整のことを指します。第十二号には「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」もあります。第32条が示しているのは管理組合が行う業務の範囲であって、それぞれを誰が承認するかは別の話です。承認する主体は、規約や使用細則、掲示板の運用ルールで確かめます。
次に、予算書と決算書、会計帳簿や請求明細で、お金を確かめます。同規約第27条は管理費の充当先を並べていて、第十号が「管理組合の運営に要する費用」、第十一号が「その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を除く。)」です。自治会費や町内会費という項目は、この各号には出てきません。一方で、管理組合自身が第32条第十二号の防災や居住環境の業務として行う活動の費用は、第十一号を通じて管理費の充当先に入ります。ただし第十一号は次条に規定する経費を除いているので、改良や変更に当たる費用は第28条の修繕積立金の側になることがあります。町会という別の団体の会費を払うことと、管理組合が自分の業務として防災に取り組むことは、分けて考えます。
| 管理費 | 自治会費・町内会費 | |
|---|---|---|
| だれが負担するか | 区分所有者の全員 | 各団体の規約と加入の状況による |
| 何を根拠に額が決まるか | 標準管理規約第25条第2項では、共用部分の共有持分に応じて算出する | 各団体の規約や総会等の決定 |
| 何に使うか | 標準管理規約第27条が並べる通常の管理に要する経費 | 各団体の活動 |
裁判例にも、自治会費と共益費を別々の根拠で判断したものがあります。最高裁は、県営住宅の自治会について、強制加入の団体ではなく、規約に退会を制限する定めも設けていないことから、会員はいつでも一方的な意思表示で退会できるとしました。そのうえで、退会した月の翌月以降の自治会費の支払義務は消滅するとした一方、共益費については、そこに入居している限り自治会に支払うことを約したものとして、退会しても支払義務は消滅しないとしています(最高裁判所第三小法廷 平成17年4月26日判決、平成16年(受)第1742号、自治会費等請求事件)。分譲マンションの管理組合の事案ではありません。
規約と経理と名簿を管理計画認定の項目に沿って点検する管理状況のセルフチェックは、このうち規約と会計の棚卸しの手がかりになります。
では、いま何をすればよいのか
依頼が届いてから対応の方針を決めるまで、順番があります。
はじめに、前の章で並べた四つのまとまりを机に出します。見比べるのは、設置予定地の扱い、過去の決定、お金の流れの三つです。前の理事会が交わした覚書が出てくることもあります。
次に、依頼してきた団体から、設置場所と配置図、倉庫の寸法と固定の方法、所有者と使用者、使用の目的と期間、設置費や維持費の負担、鍵と収納物の管理者、事故や破損が起きたときの責任、撤去と原状回復の条件を、書面で出してもらいます。計画の中身が分からなければ、どの決議が必要かも、どの住戸にどれだけ影響するかも判断できません。
そのうえで、届いた依頼を二つに分けます。
一つは、敷地・共用部分に関する話かどうかです。敷地に倉庫を据える、外壁に何かを取り付ける、といった依頼がこちらに入ります。ここで先に見るのは、管理組合の外の団体に敷地を使わせてよいか、という点です。マンション標準管理規約第16条第2項は、駐車場と専用使用部分を除く敷地及び共用部分等の一部について、総会の決議を経て第三者に使用させることができると定めていて、第48条第八号もこれを総会の議決事項に挙げています。設置予定地が専用庭のような専用使用部分に当たらないかも、別表と配置図で確かめます。当たる場合は、第16条第2項だけでは判断できません。専用使用権や使用契約の内容、使用している人への影響、承諾の要否、規約で必要になる手続きを別に確かめます。
そのうえで、工事そのものがどちらに当たるかを見ます。区分所有法第17条の「形状又は効用の著しい変更」に当たるのか、それ以外の第18条の管理事項に当たるのかです。第18条の管理事項には、著しい変更を伴わない変更も含まれます。同条第1項は共用部分の管理に関する事項は集会の決議で決すると定め、保存行為(現状を保つための手当て)は各共有者ができるとしています。敷地や共用部分以外の附属施設が区分所有者の共有に属する場合は、同法第21条によりこれらの規定が準用されます。
もう一つは、地域との連絡・調整かどうかです。行事の案内を掲示板に貼る、連絡の窓口を決める、といった依頼はこちらに入ります。標準管理規約第32条第十一号の渉外業務にあたる領域です。一つ目と二つ目が混ざった依頼もあります。防災倉庫の例なら、置く場所の話は一つ目、地域と連絡を取ること自体は二つ目です。相手が認可地縁団体であれば、認可を受けた正式名称と代表者も確かめます。これは契約の相手方を特定するための確認であって、管理組合の側で必要になる決議の手順が変わるわけではありません。
分けたうえで、影響を受ける住戸に向き合います。物を置く場所によっては、特定の住戸の窓の前が塞がったり、出入りに支障が出たりします。まずその住戸に事情を説明して、具体的にどう影響するかを確かめます。影響の程度によっては、区分所有法第17条第2項または第18条第3項の「特別の影響」に当たり、総会の決議とは別に、その区分所有者の承諾が必要になることがあります。窓の前に倉庫が来るから当然に該当するというものではなく、配置や距離、高さ、採光や通風への影響をもとにした個別の判断になります。
最後に、総会と理事会と理事長の役割に沿って進めます。自分たちの規約が標準管理規約と同じ内容で、設置予定地が駐車場や専用使用部分を除く敷地及び共用部分等であれば、町会に使用させることは総会で決めます。理事会は、設置場所と条件を調べ、相手方と協議し、総会に出す議案を決めます。可決されたあとは、理事長が決議の内容に沿って同意書や使用契約書を取り交わし、理事会は決議や契約の条件どおりに設置され使われているかを確かめます。第18条第1項の管理事項について、規約がどこまで理事会に委ねているかも確かめます。検討することが多いときは、理事会の権限の範囲で専門委員会に調査を任せる方法もあります。標準管理規約第55条の専門委員会は調査と検討をして理事会に報告する機関であって、総会や理事会に代わって決める機関ではありません。町会は、申入れと協議と使用契約の相手方です。管理組合の中の決定主体ではありません。
過去の覚書の読み方や、規約に書かれていない慣行の扱いに迷うこともあります。マンション管理士のような外部の専門家は、過去の決議と規約を突き合わせて、いま何が決まっていて何が決まっていないかを整理する材料を出します。決めるのは管理組合の側です。近隣との調整を含む相談先は、専門家を探すから探せます。理事の役割や引き継ぎそのものに悩みがあるときは、マンション役員「なり手不足」の処方箋も合わせて読めます。
よくある質問
地域からの頼みごとなので、理事会で引き受けてよいでしょうか
依頼の中身によります。駐車場や専用使用部分を除く敷地及び共用部分等を町会に使わせる話なら、規約が標準管理規約と同じ内容であれば第16条第2項と第48条第八号により総会の議決事項になり、工事の内容によっては区分所有法第17条または第18条の決議も関わります。連絡や調整だけなら、標準管理規約第32条第十一号の渉外業務にあたる領域です。まず依頼をこの二つに分けるところから始まります。
管理費と一緒に自治会費を引き落としていますが、このままでよいでしょうか
二つに分けて確かめる必要があります。誰が自治会費を負担することになっているかは、自治会・町内会の規約や決定と、実際の加入状況で決まります。管理組合が徴収や送金に関わる根拠と方法については、管理組合の規約、総会議事録、管理委託契約などに書かれているかを確かめます。長年の慣行だけで続いていて、根拠になる記載が見つからないこともあります。標準管理規約第27条が並べる管理費の充当先に、自治会費や町内会費という項目はありません。徴収の方法を一本にまとめていること自体と、誰の負担として決まっているかは別の話です。誰から引き落としているか、請求明細と帳簿で管理費と自治会費が分かれているかを見て、いまの扱いがいつ何を根拠に始まったのかをさかのぼります。裁判例もあります。管理組合が、管理組合費のうち町内会費に当たる部分を含む未払額を区分所有者に請求した事案で、東京簡易裁判所は、町内会費の徴収は共有財産の管理に関する事項ではなく区分所有法第3条の目的外の事項であるから、管理組合が多数決で決定したり規約等で定めても拘束力はない、と判断しました。さらに、委託契約の成立など、管理組合が請求の権利主体であることについての主張・立証もなかったことから、その部分の請求を認めませんでした。一方、管理組合の運営に充てる部分については支払義務を認めています(東京簡易裁判所 平成19年8月7日判決、平成18年(ハ)第20200号、管理費等請求事件)。簡易裁判所が個別の事情のもとで示した判断であり、どの組合にもそのまま当てはまるものではありません。
役員が減っていて地域の行事に人を出せません
行事という名前ではなく、活動の中身で分けます。マンションの避難訓練、防災設備の確認、防犯の取り組みは、標準管理規約第32条第十二号が挙げる防災や居住環境の維持向上に関する業務に当たることがあります。一方、町会が会員に向けて行う祭りや懇親会については、まず、町会側が担う運営と、管理組合が担う連絡や調整を分けます。管理組合として人員や費用を出す場合は、それが管理組合の業務の範囲に入るか、事業計画や予算に位置付けられているかを別に確かめます。
まとめ
- 管理組合と自治会・町内会は構成員の決まり方から違う別の団体だと押さえること
- 誰が何を根拠に負担しているかという目で、管理費と自治会費の扱いを確かめること
- 依頼が来たら「敷地・共用部分に関する話」と「地域との連絡・調整」に分けて扱うこと
地域との関わりは、長年の慣行で続いていることが多く、書面が残っていない場合もあります。まず、規約と議事録と会計記録から、決まっていることと決まっていないことを分けます。決まっていない事項は、必要な手続きを踏んで改めて決めます。
出典
- 建物の区分所有等に関する法律(第3条、第17条第1項・第2項、第18条第1項・第2項・第3項、第21条)
- マンション標準管理規約(単棟型)令和7年10月17日改正(PDF)(第6条、第16条第2項、第25条、第27条、第28条、第32条、第38条、第48条第八号、第51条、第54条、第55条、第60条第1項)
- 地方自治法(第260条の2第1項、第2項第三号、第7項)
- 総務省「認可地縁団体制度の概要(地方自治法第260条の2)」(PDF)
- 最高裁判所第三小法廷 平成17年4月26日判決(PDF。平成16年(受)第1742号・自治会費等請求事件)
- 東京簡易裁判所 平成19年8月7日判決(PDF。平成18年(ハ)第20200号・管理費等請求事件)
- ほしこ⭐︎さん(@xippei78)のポスト(X、2026年9月15日)/リードの引用
制度・条件の確認日:2026-09-19
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。


