大規模修繕

大規模修繕の業者選定を切り分ける方法はあるか──理事会が契約書で確かめること

見積りが出そろってから、この選び方は誰が決めたのかと気づくことがあります。大規模修繕に並ぶ四つの仕事の分け方、コンサルとの契約書で見る一行、施工業者の選定を切り離すやり方、工事の請負契約に入れておける談合違約金の条項までを順に整理しました。

2026年9月22日
約10分
コネルコネル(管理組合の相談コンシェルジュ)
大規模修繕の業者選定を切り分ける方法はあるか──理事会が契約書で確かめること
目次
  1. 大規模修繕には、どんな仕事が並んでいるのか
  2. そもそも、うちは誰と、どの契約を結んでいますか
  3. 選定を切り離す方法と、契約に入れておける条項
  4. では、いま何をすればよいのか
  5. よくある質問
  6. まとめ
  7. 出典

横浜市は、住まいの情報をまとめたページの中に、談合を防ぐため、マンション管理組合ができることという見出しのページを置いています。業者を選んだ過程を記録して共有すること、複数の会社から見積りを取ること、第三者の専門家に相談すること、入札の仕組みや違約金の条項を取り入れることを、管理組合ができる対策として案内しています。

東海地方のマンションの大規模修繕をめぐっても、談合の疑いで工事業者と設計監理のコンサルに公正取引委員会の立入検査が入ったと全国紙が報じた、とマンション管理新聞が伝えています。愛知・岐阜・三重の管理組合が行った工事の見積もり合わせ(複数の会社から見積りを取って比べる方法)や入札で、受注予定者を決めるなどの調整があった疑い、という内容です。

見積りが出そろい、あとは業者を決めるだけという段階まで来てから、この選び方は誰が決めたのだろう、と気づくことがあります。理事会が選んだのか、コンサルが示した進め方に乗ったのかが、あとから追えないこともあります。管理組合の相談コンシェルジュ、コネルです。

この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。

  • 大規模修繕の仕事を、調査・診断、設計、施工業者の選定、工事監理の四つに分けて、誰がどれを担うのかを確かめること
  • コンサルとの契約書に、施工業者の選定を補助する業務が入っているかを確かめること
  • 工事の請負契約に談合違約金の特約条項を入れるかどうかを、施工業者と契約を結ぶ前に決めること

この記事は、四つの仕事の並び、いま誰とどの契約を結んでいるか、選定を切り離す方法と契約に入れておける条項、いま何をするか、の順で進みます。

大規模修繕には、どんな仕事が並んでいるのか

工事そのものの前に、いくつかの仕事が並んでいます。下の並べ方は一つの公式な分類ではありませんが、誰が何を担っているのかを見るには、この四つに分けると分かりやすくなります。

仕事何をするかひとことで言うと(コネルの補足)理事会が見る書類
調査・診断建物の傷み具合を調べ、直す範囲を見立てる工事の出発点を決める仕事です調査報告書、劣化診断の結果
設計直す範囲を仕様書と図面にまとめる見積りを比べられる形を作る仕事です設計図書、仕様書、数量の内訳
施工業者の選定業者に声をかけ、見積りを集め、比べる誰が工事をするかを決めるための材料をそろえる仕事です募集の条件、見積書、選定の記録
工事監理工事が設計どおりかを確かめる図面と現場を突き合わせる仕事です監理報告書、定例会の議事録

右の列に挙げたのは一般的な呼び名で、書類の名前も出てくる時期も契約によって違います。手元にある書類が、四つのどの仕事のものなのかという目で並べ直します。

そもそも、うちは誰と、どの契約を結んでいますか

答えを先に言うと、コンサルとの契約書を開いて、業務の範囲に施工業者の選定を補助する業務が入っているかを見るところからです。

大規模修繕の契約は、大きく二種類に分かれます。一つは、調査・診断、設計、施工業者の選定の補助、工事監理といった仕事を頼む業務委託契約で、仕事を別々の相手に頼めば契約も複数になります。もう一つは、施工業者との工事請負契約で、工事そのものを頼むものです。標準管理規約は、収支予算と事業計画、一定年数ごとに計画的に行う修繕などの「特別の管理」の実施とそれに充てる修繕積立金の取崩し、組合管理部分に関する管理委託契約の締結、その他の重要事項などを、総会の議決事項に挙げています。今回の業務委託契約や工事の契約が、どの段階でどの総会決議を要するのかは、自分たちの規約、承認済みの予算と事業計画、過去の総会の決議で確かめます。

コンサルとの契約書では、業務の範囲を一つずつ照らします。調査・診断だけなのか、設計まで入っているのか、施工業者の選定を補助する業務が含まれているのか、工事監理まで続くのか。「工事業者選定補助」「入札事務」といった言葉で書かれていることがあります。見出しだけでなく、業務の内訳の欄まで見ます。

あわせて、選定の進め方がどの書類に書いてあるかも確かめます。何社に声をかけるのか、募集の条件は誰が決めるのか、見積書は誰がいつ開封するのか、候補を比べるのは誰か、最終的な発注を決めるのはどの会議体か。契約書や仕様書に書かれていなければ、提案書、選定の要領、総会や理事会の議案書と議事録も確かめます。そこにも見当たらない場合は、進め方が文書で決まっていない可能性があります。

選定を切り離す方法と、契約に入れておける条項

四つの仕事のうち、施工業者の選定だけを別の主体に任せる、という考え方があります。横浜市住宅供給公社の入札代行サービスは、その形の一つです。

公社が第三者として、一定の条件を満たす業者なら参加できる入札(条件付一般競争入札)の手続を代行し、落札の結果を管理組合に通知します。落札で契約が決まるのではなく、管理組合が工事の発注を総会で承認したあとに、落札した業者と工事請負契約を結びます。利用できるのは横浜市内の分譲マンションの管理組合で、総会で利用と予算の承認を得ていること、設計業務が終わっていること、工事監理の体制が確保されていることが条件です。利用料は落札額に対する率で、工事の規模が大きいほど率が下がります。入札が成立せず落札した業者が決まらなかった場合は、手数料は発生しません。

理事会にとっていちばん効いてくるのは、すでにコンサルと施工業者の選定について契約を結んでいる場合は利用できない、という条件です。ただし公社は、業者の選定にまだ着手していなければ利用できることがあるので相談してほしい、とも案内しています。公社は設計を発注する前に相談することを勧めています。契約済みだからと決めつけずに、契約書と業務がどこまで進んでいるかを確かめてから相談する、という順番です。

これは横浜市の仕組みで、自分のまちに同じものがあるとは限りません。自分の市区町村に似た支援があるかを調べる手順は、自治体の支援の探し方で扱っています。

もう一つ、工事の請負契約に入れておける条項があります。国土交通省は、マンションの関係団体に宛てて、談合違約金の特約条項についての事務連絡を出し、条文例を示しています。

条文例で管理組合が違約金を請求できるのは、限られた場合です。受注者がこの工事の契約に関して、公正取引委員会の課徴金納付命令(独占禁止法違反に対してお金の納付を命じる処分)を受けてその命令が確定したとき、確定した課徴金納付命令または排除措置命令(違反行為をやめることなどを命じる処分)で独占禁止法に違反する行為があったと認定されたとき、受注者やその役員・使用人について、刑法の談合に関する罪や独占禁止法の不当な取引制限などに対する刑が確定したとき、のいずれかです。いずれも管理組合の請求に基づいて支払う形で、立入検査や疑いの報道だけでは要件を満たしません。

違約金の額は、請負代金額の何%かを当事者で決めて書き入れる形です。参考として付いている国の直轄工事の条項では基本を請負代金額の10分の1としていますが、マンション工事の標準の率として示されたものではありません。あわせて、受注者が該当したときに管理組合へ通知する義務と、支払いが遅れた場合の利息が定められ、実際の損害が違約金の額を超えるときは、その超えた分を別に請求できることになっています。ただし、条項を入れても、支払いをめぐって争いになったり、支払われなかったりするおそれが残ることは、事務連絡自体が書いています。そのため事務連絡は、弁護士などの専門家に相談することを勧めています。

条項を入れるかどうかは、相手のある話です。契約を結んだあとに管理組合だけで足すことはできず、足すには相手の合意を得て変更の契約を結ぶことになります。見積りや入札の条件を示す段階から条項案を入れておくと、契約の直前で行き違いになりにくくなります。一方、施工業者の選定を切り離すかどうかは、選定の業務が始まる前の、もっと早い段階で検討するものです。二つの手は、決める時期が違います。

談合の手口や、コンサルを見分けるときの目の付けどころは、大規模修繕の裏側で扱っています。この記事で扱っているのは、その手前の、契約と手続で決められる部分です。

では、いま何をすればよいのか

最初にすることは、コンサルとの契約書と、工事の請負契約の書式を取り出すことです。契約前なら見積書と提案書を、契約後なら締結済みの契約書と仕様書をそろえます。

次に、四つの仕事の担い手を書き出します。調査・診断、設計、施工業者の選定、工事監理を縦に並べて、誰が担うことになっているかを横に書きます。空欄が残るなら、まだ決まっていないか、書類から確認できていない部分です。

そのうえで、選定の進め方がどの書類に書いてあるかを確かめます。募集の条件、声をかける先の決め方、見積書の開封、結果の説明。契約書や仕様書、過去の議案書と議事録、選定の要領を見ても決め方が見当たらなければ、まず理事会で案を整理します。総会の議決事項に当たるなら総会に諮り、すでに結んだ契約を変える話なら相手の合意を得て変更の契約を結びます。

ここまで整理できたら、二つの案を検討します。施工業者の選定を切り離せるか。工事の請負契約に談合違約金の特約条項を入れるか。前者は、コンサルに選定の業務を頼み、その業務が始まる前に検討します。後者は、施工業者との請負契約を結ぶ前に、施工業者と合意します。契約の直前で行き違いにならないように、施工業者に見積りや入札の条件を示す段階から、条項案を出しておきます。

住民への説明は、決め方の話として用意します。誰がどの仕事を担うのか、業者をどう選ぶのか、契約にどんな条項を入れるのか。金額の前に決め方を示しておくと、総会で額の話に入ったときに、根拠を聞かれても答えやすくなります。

最後に、総会と理事会の役割を確かめます。標準管理規約では、大規模修繕などの「特別の管理」の実施と、それに充てる修繕積立金の取崩しが総会の議決事項に挙げられています。あわせて、承認済みの収支予算を変える必要があるなら、理事長がその案を臨時総会に提出して承認を得ることとされています。工事の契約そのものだけでなく、予算の組み替えが要るかどうかも先に見ておきます。理事会は、総会に出す案と資料をまとめるだけでなく、規約や総会の決議で理事会の権限とされた業務の執行を決め、その執行を監督する立場です。どこまでが理事会に任されているかは規約と過去の総会の決議で変わるので、自分たちの組合で確かめます。専門家には条文案や手続を確かめてもらい、最終的に決めるのは、規約と総会の決議に従う管理組合です。

契約書の読み方や、選定の進め方の組み立てで判断に迷うときは、コンサルとは別の立場の人に見てもらう手もあります。相談先を探すところからであれば、専門家を探すで分野と地域から当たれます。

よくある質問

いまのコンサルを替えたほうがいいですか

この記事は、替えることを勧めるものではありません。確かめるのは相手ではなく、契約の中身です。業務の範囲に施工業者の選定を補助する業務が入っているなら、その部分を別の主体に移す案が取れるか、いまの契約でどうなるかを見ます。すでに選定まで含めて契約している場合、選択肢は契約の切り方によって変わるので、そこは専門家に相談します。

違約金の条項を入れたいと言って、業者に断られたらどうしますか

条項を入れるかどうかは契約の中身なので、双方が納得しないと入りません。断られたときに、その理由を記録に残しておくと、総会で説明する材料になります。国土交通省の事務連絡も、条文例を示したうえで弁護士などへの相談を勧めています。専門家に条文案を見てもらったうえで、規約と総会の決議に従って管理組合として決めるほうが進みます。

入札にすると、かえって高くなりませんか

入札にすれば安くなる、とは言えません。参加の条件をどう決めるか、設計図書がどこまで詳しいかで結果は変わります。この記事で扱っているのは額そのものではなく、選び方が誰の手にあるかです。どちらの進め方でも、募集の条件と選定の記録を残しておけば、あとから経緯を説明しやすくなります。

まとめ

  • 大規模修繕の仕事を、調査・診断、設計、施工業者の選定、工事監理の四つに分けて、誰がどれを担うのかを確かめること
  • コンサルとの契約書に、施工業者の選定を補助する業務が入っているかを確かめること
  • 工事の請負契約に談合違約金の特約条項を入れるかどうかを、施工業者と契約を結ぶ前に決めること

四つの仕事に分けて契約書の業務の範囲を確かめ、選定の業務が始まる前と工事の請負契約を結ぶ前に、それぞれ決める。この順に進むと、見積りが出そろってからではなく、その手前で手を打ちやすくなります。

出典

制度・条件の確認日:2026-09-22

管理規約の見直し

この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには

記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。

管理組合の理事の方へ

現行規約と改正法のずれを管理士が洗い出し、総会に出せる改正案まで伴走します。「うちのマンションではどこが変わるのか」から相談できます。

規約の見直しを相談する
管理会社・マンション管理士の方へ

管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。

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管理組合の相談コンシェルジュ

管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。

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