法律・制度

マンション修繕の談合に処分が出た──うちの工事は別表に載っているか、理事会がいま確かめること

関東のマンションの大規模修繕工事をめぐる談合で、公正取引委員会が設計コンサル業者2社を含む事業者に排除措置命令を出し、施工業者のうち対象となった事業者に課徴金の納付を命じました。何が認定されたのか、自分たちの工事が別表に載っているかの確かめ方、これから発注する組合が先に決めておくことを整理しました。

2026年9月28日
約10分
コネルコネル(管理組合の相談コンシェルジュ)
マンション修繕の談合に処分が出た──うちの工事は別表に載っているか、理事会がいま確かめること
目次
  1. 今回、何が談合と認定されたのか
  2. そもそも、うちの工事は別表4に載っているのか
  3. では、いま何をすればよいのか
  4. よくある質問
  5. まとめ
  6. 出典

公正取引委員会は、関東のマンションの管理組合が設計コンサル業者に委託して発注した大規模修繕工事をめぐり、独占禁止法違反を認定しました。設計コンサル業者2社を含む事業者に排除措置命令(違反行為を既に行っていないことの確認、再発防止、関係する管理組合への通知などを命じる処分)を出し、施工業者のうち対象となった事業者には課徴金納付命令(国にお金を納めることを命じる処分)を出しています。立入検査が報じられてから続いていた件です。

ニュースを見て、うちの修繕のときのコンサルはどこだったか、うちの工事は含まれていないか、と気になった理事もいるはずです。管理組合の相談コンシェルジュ、コネルです。

この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。

  • 認定されたのは、見積り合わせの前に受注予定者と見積価格などが調整され、ほかの施工業者は連絡された価格で見積りを出すか参加しないことで協力していた仕組みだったこと
  • 自分のマンションの工事が、公正取引委員会が違反行為による受注として掲げた工事かは、命令書の別表4にある工事名と契約年月日で確かめられること
  • これから発注する組合は、施工業者からコンサルへの手数料の取り決めの有無と内容を書面で確かめ、候補の業者に開示する情報としない情報を、理事会で先に決めること

この記事は、何が認定されたのか、うちの工事は別表4に載っているのか、いま何をすればよいのか、の順で進みます。

今回、何が談合と認定されたのか

工事ごとに、設計コンサル業者と施工業者らが受注予定者を決め、受注予定者以外の施工業者は、連絡された見積価格を管理組合に出すか、見積り合わせ(複数の会社から見積りを取って比べる方法)に参加しないことで協力していた、と認定されました。見積り合わせの手続が行われていても、受注予定者と出す価格が先に調整されていた、という内容です。

対象は、管理組合が計画的に発注する、外壁全面に足場を組むような大規模修繕工事です。地域は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県で、設計コンサル業務を株式会社リノシスコーポレーションまたは株式会社翔設計に委託していた工事です。命令はコンサルごとに2件に分かれています。

下の表は命令書の記載をもとに役割を整理したもので、一つの公式な分類ではありません。

立場命令書に書かれていることひとことで言うと(コネルの補足)
設計コンサル業者受注予定者の意向を踏まえるなどして設計コンサル業務を行い、業務の中で得た設計予算などの情報を受注予定者側に提供した管理組合から受けた業務で得た情報が、受注予定者側に渡っていました
受注予定者になった施工業者コンサル業者と協力関係を築いた施工業者が、工事ごとに受注予定者とされた管理組合が正式に発注先を決める前に、受注予定者として調整されていました
ほかの施工業者依頼に応じて見積り合わせに参加し、連絡された見積価格を管理組合に出すか、参加しなかった連絡された価格で見積りを出すか、参加しないことで協力していました
受注後の支払いコンサル業者の協力を得て受注した施工業者が、コンサル業者との協議に基づき、原則として工事の契約価格の5パーセントを目安とする金額を支払っていた管理組合との契約とは別に、施工業者からコンサル業者への支払いがありました

排除措置命令の社数は、両方の件に名前がある会社を重ねて数えています。

そもそも、うちの工事は別表4に載っているのか

2通の排除措置命令書には、それぞれ末尾に別表4があります。公正取引委員会は、リノシスコーポレーションまたは翔設計に委託して発注された対象工事について受注調整を認定し、その大部分に当たる別表4記載の工事を、施工業者らがこの仕組みによって受注していたとしています。別表4には、工事名、契約年月日、受注した事業者が載っています。工事名にはマンション名が入っているので、自分たちの工事請負契約書の工事名と契約年月日を別表4と照らすのが、いちばん早い確かめ方です。

別表4と照らすために、まず手元に出す書類は三つです。設計コンサルとの業務委託契約書では、相手の会社名を見ます。施工業者との工事請負契約書では、工事名、契約年月日、施工業者名を見ます。施工業者の選定や承認を行った総会の議案書と議事録では、どう選んだかの記録を見ます。総会が理事会に選定を任せていた場合は、理事会の議事録と選定資料も見ます。

認定では、リノシス関係は遅くとも令和3年9月27日以降、翔設計関係は遅くとも同年11月16日以降にこの仕組みが続き、令和7年3月4日の立入検査のあとに取りやめられました。事業者ごとに期間が異なる例外もあります。

では、いま何をすればよいのか

最初にすることは、前の章の三つの書類をそろえ、別表4と照らすことです。照らした日と見た書類を理事会の記録に残しておくと、組合員から尋ねられたときに答えやすくなります。

自分たちの工事が別表4に載っていた場合は、届く通知を確かめます。排除措置命令では、設計コンサル業者2社に対して、別表4の工事を発注した管理組合へ命令に基づいて採った措置を通知することが命じられています。命令を受けた施工業者も、自社が受注した別表4の工事の管理組合へ通知することとされています。通知が届いたら、受け取った日、送り主、内容を記録し、文書を保存します。

あわせて、理事会で事実を並べます。いつ、どのコンサルに何を委託し、どの会社がいくらで受注したか、見積り合わせに加わった会社はどこか、工事の請負契約に談合があった場合の違約金の条項があるか。公募の要領、参加した全社の見積書、見積りの比較表、ヒアリングの記録、理事会の議事録、コンサルや施工業者から受け取った資料やメールも、捨てずに保存します。命令は事業者に対する処分で、課徴金は国に納めるものです。管理組合がお金を取り戻せるかどうかは、契約の条項や個別の事情によって変わるので、そろえた書類を持って弁護士に相談します。組合員への説明は、分かっている事実と、弁護士などに確認中のことを分けて伝えます。

これから大規模修繕を発注する組合は、公正取引委員会が同じ日にまとめた、施工業者からコンサル業者に支払う手数料についての資料が参考になります。資料は、こうした手数料が、施工業者が受注できるよう情報を提供するなどして協力したことへの「報酬」として働く可能性があるとしています。そのうえで、特定の工事の発注前に、その工事を受注したら手数料を払うと取り決めることを挙げています。工事を特定しない取り決めであっても、設計コンサル業者が受注に有利な情報を提供することや施工業者がその提供を求めること、設計コンサル業者が見積り合わせの参加条件について管理組合に働きかけることや施工業者がその働きかけを求めることは、施工業者どうしの競争をゆがめるおそれがあるとしています。

コンサルと契約する前には、施工業者から手数料などを受け取る取り決めがあるかどうかに加え、あるならその対象、決め方、支払いの条件を、書面で答えてもらいます。国土交通省は平成29年の通知で、指摘されている事例として、格安のコンサル料で受託し、バックマージンを支払う施工会社が受注できるよう工作して管理組合に損失を与えた例を紹介し、コンサルが中立の立場で施工会社の選定を進めるよう注意を促しています。施工業者の選定をコンサルから切り離す方法や、工事の請負契約に入れておける談合違約金の条項は、大規模修繕の業者選定を切り分ける方法で扱っています。

これから契約する工事の見積書について、別の目で内容を確かめてもらう方法もあります。住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)は、契約前の見積書を対象に、価格の情報提供を受けられる無料の見積チェックサービスを案内しています。査定や鑑定ではなく、大規模修繕工事では図面から個々の数量を確かめることはしません。施工業者とのトラブルが起きている場合も対象外です。

役割の分け方も確かめておきます。標準管理規約では、計画修繕などの「特別の管理」の実施と、それに充てる修繕積立金の取崩しは、総会の議決事項です。理事会は、総会に出す案と資料をそろえ、規約、承認済みの予算、総会の決議で任された範囲で進めます。過去の工事について弁護士に相談する費用、相手方への請求、和解、訴訟は、それぞれ別の判断です。承認済みの予算で支出できるか、理事会の決議で進められるか、総会の決議が要るかを、自分たちの規約と過去の総会の決議で確かめます。

契約書の読み方や、別表4に載っていたときの進め方で迷う場合は、コンサルとは別の立場の人に見てもらう手もあります。相談先を探すところからであれば、専門家を探すで分野と地域から当たれます。

よくある質問

うちのコンサルはこの2社ではありません。心配しなくてよいですか

この2社に設計コンサル業務を委託した工事でなければ、今回公正取引委員会が認定した2件の受注調整の対象工事には当たりません。ただ、今回の処分は、ほかのコンサルが関わった工事について何かを示すものではありません。これから発注するなら、コンサルの会社名にかかわらず、手数料の取り決めの有無と内容、候補の業者に開示する情報の扱いを確かめることで、同じような利益相反や情報管理のリスクを点検できます。

別表4に載っていたら、お金は戻ってきますか

命令そのものは、管理組合にお金を返すよう命じるものではありません。課徴金も国に納めるものです。管理組合として何かを求められるかは、工事の請負契約やコンサルとの契約にどんな条項があるか、実際にどんな事情があったかで変わります。そろえた書類を持って、弁護士に相談するところから始まります。

コンサルが施工業者から手数料を受け取ること自体が違法なのですか

公正取引委員会の資料は、手数料の受け取りだけを取り出して、一律に違法かどうかを結論づけてはいません。ただ、手数料が受注への協力の「報酬」として働く可能性を示し、取り決め方や情報の渡し方、参加条件への働きかけによっては競争をゆがめるおそれがあると注意を促しています。管理組合にとっては、取り決めがあるかどうかを知らないまま進むこと自体を避けたいところです。

まとめ

  • 認定されたのは、見積り合わせの前に受注予定者と見積価格などが調整され、ほかの施工業者は連絡された価格で見積りを出すか参加しないことで協力していた仕組みだったこと
  • 自分のマンションの工事が、公正取引委員会が違反行為による受注として掲げた工事かは、命令書の別表4にある工事名と契約年月日で確かめられること
  • これから発注する組合は、施工業者からコンサルへの手数料の取り決めの有無と内容を書面で確かめ、候補の業者に開示する情報としない情報を、理事会で先に決めること

過去の工事は記録と別表4で確かめ、これからの工事は手数料と情報の扱いを先に決める。この二つを理事会で確認して、しっかり取り組むことが、修繕積立金を適切に使うための土台になります。

出典

制度・条件の確認日:2026-09-28

管理規約の見直し

この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには

記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。

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現行規約と改正法のずれを管理士が洗い出し、総会に出せる改正案まで伴走します。「うちのマンションではどこが変わるのか」から相談できます。

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管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。

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管理組合の相談コンシェルジュ

管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。

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