機械式駐車場を平置きにしたいと言われたら──撤去の前に理事会が確かめること
空き区画が埋まらない機械式駐車場を、撤去して平置きにするか。決める前に理事会が確かめたい、選択肢の並べ方、利用状況と会計の分け方、自治体の附置義務、総会の決議と使っている人への対応を、順番に整理しました。

東京都は、駐車場条例の見直しの考え方を取りまとめました。カーシェアリングの広がりや宅配の増加で駐車の需要が変わってきたことを背景に、共同住宅についても「台数に余剰がある傾向がみられた」としています。駐車場が余っているのは、一つのマンションだけの話ではなくなってきています。
機械式駐車場の空き区画がなかなか埋まらない。そこへ装置の更新の見積りが届き、総会で「いっそ撤去して平置きにすれば」という声が出る。管理組合の相談コンシェルジュのコネルです。この場面で理事会が何から手をつければよいかを、いっしょに整理します。
この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。
- 撤去・平置きは選択肢の一つで、使い続ける・台数を減らす・外に貸すなどと並べて比べられること
- 決める前に、利用状況・会計の分け方・自治体の附置義務の三つを、書類と窓口で確かめること
- 撤去は総会で決めることになるので、決議の要件や使っている人への対応まで専門家の助言を受けて確かめてから議案にすること
はじめに選択肢を一つの表に並べ、次に手元の書類で自分たちの駐車場の状態を確かめ、最後に撤去を考えるときの順番とよくある質問を見ていきます。
機械式駐車場の見直しには、どんな選択肢がありますか
撤去して平置きにする方法は、いくつかある選択肢の一つです。次の表は、よく話題にのぼる選択肢をコネルが並べたもので、一つの公式な分類ではありません。「ひとことで言うと」の欄はコネルの補足です。
| 呼び方 | 内容 | ひとことで言うと | 出てくる資料 |
|---|---|---|---|
| 使い続ける | 部品の交換や、装置そのものの更新をして維持する | いまの台数を保つ | 保守点検の報告書、更新の見積書、長期修繕計画 |
| 台数を減らす | 一部の装置や区画を撤去し、残りを使い続ける | 使う分だけ残す | 撤去工事の見積書、長期修繕計画 |
| 鋼製床を設けて平置きにする | 装置を撤去し、ピット(地下に掘り下げた部分)を残して、その上に鋼製の床を設ける | ピットの上に床を張る | 平面化工事の見積書 |
| 埋め戻して平置きにする | 装置を撤去し、ピットを埋めて舗装する | ピットそのものをなくす | 平面化工事の見積書 |
| 空き区画を外に貸す | 区分所有者が使っていない区画を、外部の人に貸す | 空きを収入に変える | 管理規約、駐車場使用細則、外部の人との契約書の案、募集方法と収支の案 |
| 別の用途に変える | 空いた場所をバイク置き場や駐輪場などにする | 別の需要に回す | 駐車場使用細則、変更後の配置図 |
一般に、使い続ける方法はいまの台数を保ちやすい一方で、機械装置の保守や更新の費用が続きます。平置きにすると台数は減りやすく、機械装置の保守・更新の費用は抑えられますが、床や舗装、排水設備などの点検・修繕の費用は残ります。台数を減らす方法は、必要な台数を残しながら装置にかかる費用を縮められないかを探る案です。
そもそも、うちの駐車場はどうなっていますか
この記事は、管理組合が管理する敷地や共用部分に設けられた機械式駐車場を前提にしています。まず、理事会がすでに持っている書類に立ち返ります。出してもらうものは次のとおりです。
- 管理規約とその別表、配置図など(駐車場が誰のもので、誰が管理し、区画を使う権利がどう位置づけられているか)
- 駐車場使用細則と駐車場使用契約(使える人の条件、契約の期間、解約や区画の割り当ての決まり)
- 予算書と決算書(駐車場使用料の収入と、修繕積立金への繰入れの実績、保守点検などの支出)
- 長期修繕計画の機械式駐車場の行(部品交換や装置の更新がいつ、どのくらいの見込みで入っているか)
- 保守点検の契約書と点検報告書
- 建てたときの附置義務に関わる届出書や認定書など
- 空き区画の数と、順番待ちの人数
管理規約は、標準管理規約と同じ形なら、管理組合が駐車場使用契約で特定の区分所有者に駐車場を使わせ、使う人が駐車場使用料を納める、と定めています(標準管理規約15条)。集めた使用料は、その管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる、という定めもあります(同29条)。自分たちの規約がこの形かどうかを、まず確かめます。
次に見るのが、駐車場使用料を会計の上でどう扱っているかです。組合によって扱いが分かれます。
| 会計の扱い | 一般に説明されることが多い特徴 |
|---|---|
| 駐車場の会計を分けている | 使用料の収入と駐車場の支出が一つの会計にまとまるので、駐車場の収支が見えやすい |
| 分けていない | 使用料が管理費や修繕積立金に入るので、駐車場だけの収支が見えにくい |
国の長期修繕計画作成ガイドラインは、機械式駐車場の維持管理に多額の費用がかかると見込まれる場合の形として、管理費会計や修繕積立金会計とは別に駐車場使用料会計を設ける例を示しています。国の修繕積立金に関するガイドラインも、機械式駐車場は修繕工事に多額の費用がかかり、修繕積立金の額に影響する度合いが大きいとしています。機械式駐車場がある場合の積立金の目安の考え方は、修繕積立金は足りているのかの記事で扱いました。
では、撤去を考えるとき何をすればよいのか
撤去の是非を話し合う前に、材料をそろえる順番があります。
使う人の意向を聞きます。いま使っている人には今後も使うつもりか、使っていない人には車を持つ予定があるかを、アンケートで尋ねます。アンケートで先々の需要が決まるわけではありませんが、いまの利用状況に今後の意向を重ねておくと、何台残すかを話し合う材料になります。
自治体に附置義務を確認します。附置義務は、一定の規模の建物に駐車場を設けるよう、駐車場法に基づく条例で自治体が求めるしくみです。求められる台数に関わる場合は、台数を減らすのに自治体の手続きが要ることがあります。東京都では、東京都駐車場条例に加えて、建物の用途や規模によって東京都集合住宅駐車施設附置要綱が関わることもあります。いまの都の制度では、附置義務の台数を超えて駐車場を設けていて需要が少ないときに、都や区市の認定を受けて一部を廃止したり、バイク置き場などに変えたりできます。都が取りまとめた見直しの考え方では、附置義務の台数を確保したうえで台数を減らすときは、認定ではなく届出で足りるようにする方向が示されていますが、条例の改正はこれからで、時期は示されていません。どの制度が当てはまるかは、建てたときの届出書や配置図などを持って、建物のある自治体の窓口で確かめます。
選択肢ごとに見積りを取り、長期修繕計画で比べます。撤去や平置きの工事費と、使い続けた場合の保守・更新の費用を、同じ期間で並べます。区画の数や使用料の設定が変われば使用料の収入も増減するので、案ごとに利用台数と使用料を置いて収入の見込みも比べます。駐車場の費用や使用料が変わったときに積立金の残高がどう動くかは、長期修繕計画の簡易シミュレーションで大まかに確かめられます。
外に貸す場合は、規約と税の扱いを確認します。標準管理規約15条と同じ形の規約は、駐車場を区分所有者に使わせる定めなので、外部の人に貸すには、総会で管理規約を変えることも含めて考えることになります。税については、国税庁の文書回答が、外部への貸出しを規約で認め、その収益を管理費や修繕積立金に充てて区分所有者に分配しないことなどを前提に、三つの事例を示しています。区分所有者を優先する条件を設けず、区分所有者と外部の人を同じ条件で募集して貸す事例では、全体が収益事業(駐車場業)に当たるとされました。空いている区画だけを外部に貸し、区分所有者から希望があれば一定の期間内に明け渡してもらう条件を付けた事例では、外部に貸した分だけが収益事業とされました。管理組合が広く募集したのではなく、外部からの申し出に応じて、区分所有者の利用を妨げない範囲で短い期間だけ貸した事例では、全体が収益事業に当たらないとされました。貸し方によって結論が変わり、法人税の申告が要る場合もあるので、実際の貸し方は税理士や税務署に確かめます。
議案に必要な決議の要件を確認します。改正された区分所有法では、形状や効用の著しい変更を伴う共用部分の変更は、原則として、区分所有者の人数の過半数が出席し、かつ出席者が持つ議決権の合計が議決権総数の過半数となることが必要です。そのうえで、出席した人の人数と議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成で決めます。規約で出席の要件を引き上げたり、賛成の割合を2分の1を超える範囲で引き下げたりしている場合もあります。設備の欠陥で他人に害が及ぶおそれをなくすための変更や、高齢の人や障害のある人の移動を楽にするための変更には、それぞれ3分の2以上で決める特例もあります。標準管理規約の47条3項・4項も同じ整理です。撤去や平置きが著しい変更に当たるか、特例に当たる事情があるかは、撤去する範囲、工事の目的、構造への手の入れ方、駐車場の機能や台数への影響、自分たちの規約などから判断することになり、理事会が選べるものではありません。工事費に充てる修繕積立金の取崩しや、使用細則の変更も、標準管理規約では総会で決める事項です(48条)。
いま使っている人への対応案を整理します。駐車場使用契約の期間、解約や区画の変更の条件、知らせる時期を確かめたうえで、工事の間の車の置き場所や、工事のあとに区画が減る場合の希望の聞き方・抽選の方法を案にします。規約で特定の組合員に専用使用を認めている区画などで、変更がその人の使用に特別の影響を及ぼすときは、その人の承諾が要るかも確かめます(標準管理規約47条10項)。使っている人に早めに説明しておくことが、総会での話し合いを落ち着いたものにします。
こうした確認は、分野ごとに相談先が分かれます。附置義務は自治体の窓口や建築士、工法や見積りは建築士や工事会社、決議の要件や使用契約は弁護士、税は税理士が判断材料を出します。マンション管理士には、資料の整理や選択肢の比べ方、合意形成の進め方、ほかの専門家へのつなぎを相談できます。理事会はその助言を踏まえて議案を作り、工事をするかどうかは総会が決めます。
よくある質問
空き区画が多ければ、理事会だけで撤去を決められますか
標準管理規約と同じ形の規約なら、理事会だけでは決められません。管理組合が管理する機械式駐車場の撤去や平置きは、通常、敷地や共用部分等の変更として総会の決議が要り、必要な賛成の割合は工事の内容と規約によって変わります。修繕積立金を取り崩す場合も総会の決議が要ります。理事会の役目は、選択肢を比べる資料と議案を用意し、総会で区分所有者が判断できるようにすることです。
撤去すると、マンションの資産価値が下がりませんか
一概には言えません。車を使う人にとっては、敷地内の区画が減ることは不便です。一方で、使われない装置の保守や更新の費用が修繕積立金を圧迫し続けることも、建物の維持に響きます。アンケートで意向を確かめ、何台残すかを含めて比べることが大切です。
空き区画を外に貸せば、解決しますか
解決する場合もありますが、それだけで済むとは限りません。規約の変更が要るか、外部の車が出入りすることへの防犯の備え、区分所有者が使いたくなったときの明け渡しの条件、貸し方によっては税の申告が要ることを、あわせて整理する必要があります。収入と手間を並べて比べます。
まとめ
- 撤去・平置きは選択肢の一つで、使い続ける・台数を減らす・外に貸すなどと並べて比べられること
- 決める前に、利用状況・会計の分け方・自治体の附置義務の三つを、書類と窓口で確かめること
- 撤去は総会で決めることになるので、決議の要件や使っている人への対応まで専門家の助言を受けて確かめてから議案にすること
書類と窓口で一つずつ確認して、総会に出せる案にしっかり取り組むことが、撤去を急ぐよりも結果として早い道になります。
出典
- 東京都「『東京都駐車場条例の見直しの考え方(案)』について皆様の御意見を募集します」(2026年6月8日)/見直しの背景
- 東京都「『東京都駐車場条例の見直しの考え方(案)』に対する意見募集の結果について」(2026年8月28日)
- 東京都都市整備局「東京都駐車場条例の見直しの考え方」(PDF)/共同住宅の附置基準、台数を減らす場合の手続き
- 東京都都市整備局「駐車施設の附置義務」/現行の認定による一部廃止・転用、東京都集合住宅駐車施設附置要綱
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定、PDF)/3(2)機械式駐車場がある場合、3(4)専用使用料等からの繰入れに関する留意点
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定、PDF)/第3章第1節9
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年10月17日改正、PDF)/15条、29条、47条、48条
- 法務省「建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律 新旧対照条文」(PDF)/17条(令和8年4月1日施行)
- 法務省「区分所有法・被災区分所有法の改正について」(PDF)/共用部分の変更の多数決要件の特例
- 国税庁「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について(照会)」(平成24年2月の文書回答)
制度・条件の確認日:2026-09-27
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。


