修繕積立金の値上げが総会で通らなかったとき──理事会が次にやることの順番
総会で修繕積立金の値上げ議案が通らなかったあと、理事会が次に何をするか。否決・審議の保留・上程の見送り・定足数不足の見分け方、規約のどこを開くか、反対の理由の分け方、次に諮る総会と招集通知からの逆算までを、標準管理規約の定めに沿って順に整理しました。

Xに、修繕積立金の倍増案をめぐる、こんな投稿がありました。
築25年のマンション。 総会に出された議案は 修繕積立金の倍増だった。
住「急に倍とは」 理「長期修繕計画では、実は…」
この投稿が描いているのは、倍増案を前にした驚きです。議案の結末までは書かれていませんが、増額の提案が上程の前や総会の場で止まった経験は、管理会社への調査でも挙がっています。賛成が足りずに否決されることもあれば、事前に出た意見で反対が強く、上程そのものを見送ることもあります。
国土交通省のマンション総合調査では、一定期間以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金を設定しているマンションの割合が、前回より増えています。一方で、長期修繕計画上の積立額に比べて現在の積立残高が不足しているマンションの割合も、同じ調査で前回より増えています。計画はあるのに、積立残高がそこに届いていない。その不足への対応として検討される選択肢の一つが、修繕積立金の値上げです。
総会まで進んだ場合は議案書と総会の議事録が、手前で見送った場合は理事会の資料と議事録が手元に残り、決まっていないのは次に何から手をつけるかだけ、という場面です。管理組合の相談コンシェルジュ、コネルです。
この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。
- 議案がどこで止まったのかを、否決・審議の保留・上程の見送り・定足数不足に分けて確かめること
- 積立金の額が総会の決議で決まっているのか規約に書かれているのかを、自分たちの規約で確かめること
- 反対の理由を「上げ方への反対」と「根拠が分からない」にまず分け、どちらにも当てはまらない意見を別に残すこと
この記事は、止まり方の見分け方、積立金の額が何で決まっているか、いま何をするか、の順で進みます。
議案が通らないとき、どんな止まり方があるのか
「通らなかった」と一言でいっても、総会の場で起きたことは同じではありません。まず、自分たちの組合で起きたのがどれに当たるかを見分けます。下の並べ方は一つの公式な分類ではなく、次の一手を選ぶための整理です。
| 呼び方 | 何が起きた状態か | ひとことで言うと(コネルの補足) | 次に効いてくること |
|---|---|---|---|
| 否決 | 採決まで進んだが、可決に必要な賛成が得られなかった状態 | 賛否の結論が出た形です | 反対がどれだけあったか、その記録 |
| 審議の保留(継続審議) | 採決を行わず、議論を次の機会に持ち越した状態 | 結論を出さずに止まった形です | 総会でどんな意見が出たかの記録 |
| 上程の見送り | 総会の議案書に入れること自体を理事会が取りやめた状態 | 総会に諮る手前で止まった形です | 理事会案のどこに疑問が向いたか |
| 定足数不足 | 総会そのものの成立要件、またはその議案に必要な出席要件を満たさず、採決できなかった状態 | 決議の土台がそろわなかった形です | 委任状と議決権行使書(書面で賛否を出す用紙)の集まり方 |
標準管理規約は、規約の変更などに、総会全体の成立要件とは別の出席要件を置いています。総会そのものは成立していても、その議案だけ採決できないことがあります。
止まり方が違えば、次に取りかかる場所も変わります。否決なら反対の中身から、定足数不足なら書面の集まり方から見ることになります。
そもそも、積立金の額は何で決まっていますか
答えを先に言うと、自分たちの管理規約を開いて、積立金の額がそこに書かれているかどうかを見るところからです。額が規約に書かれているのか、総会の決議に委ねられているのかで、次の議案の組み立て方が変わります。
同時に、議案が止まった段階に応じた記録を手元に出します。総会まで進んだ場合は、総会の議案書、総会の議事録、出席組合員数とその議決権数、そして賛否の集計です。上程を見送った場合は、理事会の資料と議事録を見ます。審議の保留や定足数不足で採決していない場合は、賛否の集計ではなく、出席組合員数とその議決権数の集計と、記録されている意見を見ます。標準管理規約では、議長が議事録を作成し、理事長が保管します。紙で作成する場合は、議長と議長が指名した出席組合員2名が署名します。議案書やその付随資料も、理事長が保管する定めです。どちらも、閲覧を請求する方法は電磁的方法を利用できる規約かどうかで変わるので、自分たちの規約で確かめます。議事録から読み取れるのは、記録されている範囲の意見です。
規約の書きぶりと、額を変えるときの説明のされ方は、おおよそ次のように分かれます。
| 自分たちの規約の書きぶり | 額を変えるときに一般にどう説明されるか |
|---|---|
| 規約には額を書かず、総会の決議で額を決めている | 標準管理規約は、管理費等の額と賦課徴収方法を総会の決議事項に挙げ、規約の変更と同じ重い要件を求める事項には挙げていません。そのため、普通決議(特に多くの賛成を求められる事項以外について行う、通常の総会の決議)で改定できると説明されることが多くなります |
| 規約の条文や別表に、額そのものが書かれている | 額を変えることが規約の変更に当たると説明されることがあります。その場合は、規約の変更として、より多くの賛成を必要とする特別決議が要ると説明されます |
では、いま何をすればよいのか
最初にすることは、議案が止まった段階に応じた記録をそろえることです。書面や代理人による議決権の行使は、標準管理規約では出席した組合員の数と議決権の数に算入されます。電磁的方法による議決権行使を認めている規約であれば、その方法による行使も算入されます。当日の出席だけを見ていると、賛否の全体像を読み違えます。反対が当日の出席者に偏っていたのか、書面にも広がっていたのかまで見ます。
次に、出た意見をまず大きく二つに整理します。一つは上げ方への反対で、一度に上がる幅が大きい、上がり続けるのが不安、といった負担のかたちに向いた意見です。もう一つは根拠が分からないという意見で、なぜいまその額なのか、いまのままだと何が起きるのかが伝わっていないというものです。前者は議案の中身を、後者は資料を直す話になります。住戸ごとの負担割合、工事の内容そのもの、借入れなど別の案の検討不足など、どちらにも当てはまらない意見は、別に残しておきます。「反対が多かった」とまとめてしまうと、次の議案でどこを変えるかが決まりません。
根拠が伝わっていない場合は、長期修繕計画(どの時期にどの工事を、どれくらいの費用で行う見込みかを並べた計画)に戻ります。国土交通省のガイドラインは、計画期間を30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とし、5年程度ごとに見直すことを示しています。そのうえで、計画は工事の内容、時期、費用を確定するものではないとも書かれています。見直しで計画期間の推定修繕工事費の累計額が増えれば、必要な積立金の額も増える、という関係も示されています。示し直すのは危機感ではなく、どの工事の時点で、いくら足りなくなる見込みなのかです。
計画そのものの妥当性に自信が持てないときは、マンション管理士などに、計画と積立金の関係を見てもらう手もあります。管理会社に依頼するのか、管理組合が別に依頼するのかで、誰の立場からの意見かが変わるので、そこは先に整理しておきます。相談先を探すところからであれば、専門家を探すで分野と地域から当たれます。
不足する時期と額の見込みがはっきりしたら、上げ方を組み直します。一度に上げるか、段階に分けるか、均等積立に移すか。積立方式の選び方は段階増額から均等積立への切替で扱っています。
案が固まったら、どの総会に諮るかを決めます。標準管理規約では、通常総会は毎年1回、新会計年度開始以後2か月以内に招集するとされ、臨時総会は理事長が理事会の決議を経ていつでも招集できるとされています。組合員の側から請求して開く道もあります。次の通常総会が近いなら待つ、資金の手当てを急ぐなら臨時総会、という分かれ方になります。
日程は、総会の日から逆算します。標準管理規約では、通知は原則として会議の日の2週間前までに、日時、場所、目的、議案の要領を示して発します。議案の要領には、組合員が賛否を検討できる程度に、決議しようとする内容を示します。総会では、あらかじめ通知した事項についてのみ決議することができるので、通知を出す前に議案の範囲を固めておきます。実務で先に来る期限は、総会の日ではなく、その通知を発送する日です。
そのあいだの工事の扱いも決めておきます。まず、すでに総会で承認された予算、事業計画、工事の実施、修繕積立金の取崩しの範囲で行えるものかを確かめます。そのうえで、管理費で行う通常の管理や経常的な補修か、修繕積立金を使う特別の管理かを分け、追加の総会決議が要るかを確認します。標準管理規約では、特別の管理の実施と、それに充てる修繕積立金の取崩しは、原則として総会の決議事項です。管理費で行う工事でも、承認済みの予算や規約上の権限の範囲を超えるなら、管理費から出せるという理由だけでは進められません。ただし、災害等の緊急時や、災害等で総会の開催が困難な場合には別の定めがあります。安全上すぐに対応が必要なものは、通常の総会を待たずに、自分たちの規約にある緊急時の手続を確かめます。
今回の積立金の額の変更を決めるのは総会です。理事会は議案と資料を用意する立場で、総会に出す議案は理事会の決議を経て諮ることになります。否決を理事会全体への評価と決めつけず、その議案と資料のどこに反対があったのかを先に確かめます。
いまの計画で不足がどれくらいの大きさになるかを先につかんでおくと、説明の物差しになります。長期修繕計画の簡易シミュレーションは、手元の計画の数字を入れて試せます。
よくある質問
否決された議案を、次の総会にもう一度出せますか
総会に出す議案は理事会の決議を経て諮ることになっているので、理事会が改めて決議すれば、次の総会の議案にすることはできます。ただし、同じ内容の議案を同じ資料で出せば、同じ理由で反対される可能性があります。反対の理由のどこに手を当てたのかが議案書から読み取れる形にします。なお、否決された議案の再提案について自分たちの規約に別の定めがないかは、あわせて確かめておきます。
臨時総会を開くには、何が要りますか
標準管理規約では、理事長が必要と認める場合に、理事会の決議を経て招集できるとされています。招集通知は、会議の日の2週間前までに、日時、場所、目的、議案の要領を示して発します。組合員の側からも、組合員総数と議決権総数の各5分の1以上の同意を得て会議の目的を示して請求することができ、理事長が通知を発しないときは請求をした組合員が招集できるとされています。手続そのものより、議案の要領を、組合員が賛否を検討できる程度まで固められるかが、日程を左右します。
次の総会まで待つあいだ、修繕工事はどうなりますか
まず、すでに総会で承認された予算、事業計画、工事の実施、修繕積立金の取崩しの範囲で行えるものかを確かめます。そのうえで、管理費で行う通常の管理や経常的な補修か、修繕積立金を使う特別の管理かを分け、追加の総会決議が要るかを確認します。管理費で行うものでも、承認済みの予算や規約上の権限の確認は要ります。安全上すぐに対応が必要な場合は、通常の総会を待たずに、規約にある緊急時の手続を確かめます。
まとめ
- 議案がどこで止まったのかを、否決・審議の保留・上程の見送り・定足数不足に分けて確かめること
- 積立金の額が総会の決議で決まっているのか規約に書かれているのかを、自分たちの規約で確かめること
- 反対の理由を「上げ方への反対」と「根拠が分からない」にまず分け、どちらにも当てはまらない意見を別に残すこと
止まった場所を確かめて、規約を開いて、反対の中身を分ける。この順に進むと、次の議案で直す場所がはっきりします。
出典
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年10月改正)(PDF)/第21条(敷地及び共用部分等の管理)、第25条(管理費等)、第27条(管理費)、第28条(修繕積立金)、第42条(総会)、第43条(招集手続)、第44条(組合員の総会招集権)、第46条(議決権)、第47条(総会の会議及び議事)、第48条(議決事項)、第49条(議事録の作成、保管等)、第49条の2(総会資料の保管等)、第51条(理事会)、第54条(議決事項)、第58条(収支予算の作成及び変更)。案内ページはマンション標準管理規約
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)(PDF)/長期修繕計画の精度、計画期間の設定、計画の見直しの周期、修繕積立金の額の設定の考え方
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」(令和6年6月公表)(PDF)/計画期間25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金の設定、長期修繕計画上と現在の修繕積立金積立額の差
- ひいらぎ(@hiiragi2280)のポスト(X、2026年9月7日)/リードの引用
制度・条件の確認日:2026-09-18
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
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管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。


