輪番で理事が回ってきたら──最初の理事会までに確かめること
輪番で初めて理事になった人に向けて、役職が決まる仕組み、最初の理事会の前にそろえる書類と見る順番をまとめました。理事長の選び方や代理出席、協力金をめぐる最高裁の判断にも触れながら、一人で抱えずに任期を始める手順を整理します。

来月から1年間輪番で管理組合の役員になります。役割は月末言い渡される。 無風で乗り切りたい(🙏願望)
今のところ住んでるマンションの民度は悪くないです…
この投稿が描いているのは、輪番で役員になることは決まったものの、自分が何の役を受け持つのかはまだ分からず、最初の集まりを待っている場面です。管理組合の相談コンシェルジュ、コネルです。
この記事で持ち帰ってほしいことは三つです。
- 役職(理事長・会計担当など)は、標準管理規約の基本形では、総会で選ばれた理事のあいだで理事会が決める仕組みであること
- 最初の理事会の前に、規約、直近の総会の議案書と議事録、予算と決算、長期修繕計画、管理委託契約のありかを確かめ、優先するものから目を通すこと
- 一人で抱えず、今期に決まっていることと期限を最初の理事会で確かめること
役員の選ばれ方、確かめる書類、最初の理事会までにすること、の順に見ていきます。
管理組合の役員には、どんな種類があるのか
役員は、理事長・副理事長・会計担当理事を含む理事と、監事に分かれます。国の標準管理規約は、管理組合が自分たちの規約を作ったり変えたりするときに参考にする、国土交通省のひな形です。その基本形では、それぞれの役目が次のように書かれています。「ひとことで言うと」の列は、コネルの補足です。
| 役職 | 標準管理規約での役目 | ひとことで言うと | 誰が選ぶか |
|---|---|---|---|
| 理事長 | 管理組合を代表し、業務を統括する。区分所有法上の「管理者」(管理組合を代表して管理を行う立場)とされる。通常総会で前年度の業務を報告し、定期的に職務の状況を理事会に報告する | 組合の代表として全体をまとめる役 | 理事会が理事のうちから |
| 副理事長 | 理事長を補佐し、理事長に事故があるときは代理し、欠けたときはその職務を行う | 理事長を支え、いないときに代わる役 | 理事会が理事のうちから |
| 会計担当理事 | 管理費などの収納、保管、運用、支出などの会計業務を行う | お金の出入りを見る役 | 理事会が理事のうちから |
| 理事 | 理事会を構成し、理事会の定めに従って業務を担当する。組合に大きな損害が出るおそれのある事実を見つけたら、すぐ監事に報告する | 理事会で話し合い、分担して動く役 | 総会が選ぶ |
| 監事 | 管理組合の業務の執行と財産の状況を監査し、その結果を総会に報告する。理事会に出席し、必要があると認めるときは意見を述べなければならない | 組合の業務とお金を、理事とは別の立場で点検する役 | 総会が選ぶ |
理事会を構成するのは理事です。監事は理事会に出席しますが、理事会の構成員ではなく、業務と財産を監査する立場です。
標準管理規約の基本形では、選ばれ方が二段になっています。まず総会で、理事と監事が選ばれます。そのうえで、理事会の決議で、理事の中から理事長・副理事長・会計担当理事が決まります。投稿の「役割は月末言い渡される」は、総会で理事に選ばれたあと、最初の理事会で受け持つ役が決まる、この二段目を指している可能性があります。任期は規約に定める年数で、任期満了や辞任で退任する役員も、後任が就任するまでは職務を続けるとしています。自分たちの組合での扱いは、管理規約で確かめます。
役職の決め方をめぐっては、最高裁の判決(平成29年12月18日)があります。理事長を理事の互選(理事どうしで選ぶこと)で決めると定めた規約のもとで、理事会が理事の過半数の一致で理事長の職を解き、別の理事を理事長にできるかが争われました。最高裁は、その規約は理事長を理事が就く役職の一つと位置づけ、誰がその職に就くかを理事に委ねたものだとして、理事の過半数の一致で理事長の職を解くことができると判断しました。このとき解かれたのは理事長の職で、その人は理事としては残っていました。いまの標準管理規約も、理事長などの選任と解任を理事会の決議事項としています。ただ、扱いは自分たちの規約の書き方で変わるので、規約の役員の条文で確かめます。
そもそも、うちの組合はいま何を抱えていますか
組合がいま抱えていることは、最初の理事会の前に書類でつかめます。今期に決まっていることも、前の期から続いている話も、たいていどこかの書類に書かれています。ありかを確かめておきたいのは次の七つです。
| 書類 | まず見るところ |
|---|---|
| 管理規約と使用細則 | 役員の人数と任期、役職の決め方、理事会の開き方 |
| 直近の通常総会の議案書と議事録 | 可決された議案、今期にやると決まったこと、議事録に記録された主な質疑 |
| 今期の予算と事業計画 | 今期に予定されている点検・修繕と、その支出 |
| 前期の収支決算・事業報告、管理事務報告書 | 前期に組合が行ったことと収支、管理会社が受託した業務をどう実施したか |
| 長期修繕計画 | 将来予想される修繕の項目、時期、概算費用と、修繕積立金の収支の見込み |
| 管理委託契約書 | 管理会社が受け持つ業務の範囲 |
| 直近の理事会の議事録 | 続いている検討事項と、決まっていない話 |
七つすべてを最初から読み込む必要はありません。まず、規約の役員と理事会に関する部分、直近の総会の議案書と議事録、今期の予算と事業計画、直近の理事会の議事録に目を通します。残りは、置き場所や共有データの保存先を確かめておけば足ります。
管理事務報告書は、管理会社が、管理組合の事業年度が終わったあと遅滞なく作る書類です。管理者(標準管理規約では理事長)がいる組合では、管理業務主任者(国家資格を持つ人)が管理者に渡して説明します。報告の対象期間、管理組合の会計の収入と支出の状況、管理委託契約の内容に関することが書かれています。前期の組合運営全体を振り返るには、収支決算だけでなく、事業報告と理事会の議事録もあわせて見ます。
標準管理規約では、総会の議案書と資料、会計帳簿、長期修繕計画書、設計図書、修繕の履歴の情報は、理事長が保管することになっています。収支予算案・事業計画案と、収支決算案・事業報告案は、理事会の決議事項です。そのうえで理事長が総会に出し、総会が承認します。収支決算案は、総会に出す前に監事の会計監査を受けます。つまり、ここに挙げた書類の多くは、組合の中に保管されているはずのものです。
では、最初の理事会までに何をすればよいのか
書類のありかを確かめ、決まっていることと期限を拾い、最初の理事会で聞くことをメモにしておけば十分です。順番は次のとおりです。
まず、七つの書類を見られる場所や、共有データの保存先を、管理会社の担当者か前任の理事長に確かめます。前任の役員は、この一年の経緯を知る大事な相談先です。
次に、規約で役員と理事会の決まりを見ます。任期は何年か、役職をどう決めるか、理事会は何人出席すれば開けるか、WEB会議(オンラインの会議)で開けるかを確かめます。標準管理規約では、理事会はWEB会議システムなどで開く会議も含めて、理事の半数以上が出席すれば開け、出席した理事の過半数で決めるとしています。
続いて、総会の議事録から、今期にやると決まったことを拾います。総会で実施が承認された工事は、承認された範囲と予算に沿って、理事会が具体的な進め方を決め、理事長や担当の理事が実行します。規約の見直しを理事会に任せる決議があれば、理事会が改正案をまとめ、必要な決議を総会に諮ります。
予算と事業計画では、今期に予定されている点検や修繕と、その支出を見ます。
長期修繕計画では、将来予想される修繕工事の項目、時期、概算費用を見ます。書かれている時期は、工事の実施が決まったことを意味しません。建物の状態や、今期の事業計画・予算、総会の決議と照らして確かめます。大きな工事の見込み時期が近ければ、調査や検討をいつ始めるかを理事会で確かめます。
管理委託契約では、管理会社がどこまで受け持つかを見ます。清掃や点検、理事会の運営の手伝いなど、管理会社の仕事の範囲が分かると、理事会が自分たちで判断することとの境目が見えます。
そして最初の理事会で、前任からの引き継ぎ事項、いま進んでいる案件、近い期限を聞きます。答えが書類のどこにあるかも、あわせて教えてもらいます。
規約や過去の決議の読み方に迷ったら、マンション管理士などの専門家に整理してもらう道もあります。専門家は、規約と議事録を突き合わせて、いま何が決まっていて何が決まっていないかを整理し、判断の材料を示します。決めるのは組合の側です。相談先は専門家を探すから探せます。
書類を見ながら、規約・運営・経理・長期修繕計画をひととおり棚卸しするなら、管理状況のセルフチェックが使えます。
よくある質問
仕事で理事会に出られないときは?
まず、WEB会議で出られるかを規約で確かめます。標準管理規約は、理事会の会議にWEB会議システムなどで開くものを含めています。ただ、実際にオンラインで開いているかは組合によります。
本人以外の代理出席を認めるには、自分たちの管理規約にはっきりした根拠があるかを確かめます。最高裁の判決(平成2年11月26日)は、当時の管理組合法人の事案で、出席できない理事について、配偶者または一親等の親族に限って代理出席を認めるという特定の規約の条項を有効と判断しました。この判決だけで、どの組合でも家族が代わりに出られることにはなりません。誰が代わりに出られるか、どこまで代われるか、どんな手続が要るかを、自分たちの規約で確かめます。
理事を断ったら、お金を払うことになるの?
辞退できるか、辞退した場合にどう扱われるかは、まず自分たちの規約・細則と、役員の選び方の手続で確かめます。お金の負担があるときは、根拠となる条項、決めたときの手続、負担の中身を一つずつ確かめます。細則や過去の総会決議があるだけで、当然に有効になるわけではありません。
役員の辞退そのものを扱った判決ではありませんが、参考になるものとして、住んでいない区分所有者に「住民活動協力金」を負担させる規約の変更についての最高裁の判決(平成22年1月26日)があります。大規模なマンションで、当時の選挙規程では役員を居住者などから選ぶことになっていたため、住んでいない組合員は役員になることができませんでした。その一方で、組合の活動は住んでいる組合員が役員を務めるなどして担っていました。最高裁は、そのマンションの具体的な事情のもとで、変更の必要性と合理性、住んでいない組合員が受ける不利益を比べ、負担の増え方が大きくないことなども踏まえて、変更は有効と判断しました。
この判決は、役員を辞退した人に一般に協力金を求められると判断したものではありません。自分たちの組合に辞退した人への負担の仕組みがあるときも、この判決だけで有効と決めつけず、規約の中身と決めたときの手続を確かめます。
報酬は出るの?
標準管理規約では、役員は別に定めるところにより、活動に必要な経費の支払と報酬を受けられるとしています。実際に出るかどうか、いくらかは、自分たちの規約や細則、総会の決議で決まります。相場や決め方は理事長報酬はいくらが妥当?にまとめています。
まとめ
- 役職(理事長・会計担当など)は、標準管理規約の基本形では、総会で選ばれた理事のあいだで理事会が決める仕組みであること
- 最初の理事会の前に、規約、直近の総会の議案書と議事録、予算と決算、長期修繕計画、管理委託契約のありかを確かめ、優先するものから目を通すこと
- 一人で抱えず、今期に決まっていることと期限を最初の理事会で確かめること
書類と仕組みを先に確かめておけば、理事会の仲間や管理会社と分担しながら、任期の仕事にしっかり取り組めます。
出典
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年10月17日改正)(PDF)/第32条(業務)、第35条(役員)、第36条(役員の任期)、第37条(役員の誠実義務等)、第38条(理事長)、第39条(副理事長)、第40条(理事)、第41条(監事)、第48条(議決事項)、第49条(議事録の作成、保管等)、第49条の2(総会資料の保管等)、第51条(理事会)、第53条(理事会の会議及び議事)、第54条(議決事項)、第58条(収支予算の作成及び変更)、第59条(会計報告)、第64条(帳票類等の作成、保管)。案内ページはマンション標準管理規約
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント」(令和6年6月改定)(PDF)/長期修繕計画の精度
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律(e-Gov法令検索)/第77条(管理事務の報告)
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)/第88条(管理事務の報告)
- 最高裁判所第一小法廷 平成29年12月18日判決(平成29年(受)第84号)(裁判所 裁判例検索)/理事の互選で選任された理事長の職を理事の過半数の一致で解くことができるとされた事例
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年1月26日判決(平成20年(受)第666号)(裁判所 裁判例検索)/住んでいない組合員に住民活動協力金の負担を求める規約変更を有効とした事例
- 国土交通省 参考資料(理事会への代理出席を認める規約の条項に関する最高裁判所第二小法廷 平成2年11月26日判決)(PDF)
- 弐億貯男さん(@2okutameo)のポスト(X、2026年9月18日)/リードの引用
制度・条件の確認日:2026-09-23
管理規約の見直し
この記事の内容を、自分のマンションの規約に落とし込むには
記事で扱ったルールは、管理規約に書かれていて初めて総会で使えます。改正区分所有法(2026年4月1日施行)に合わせて、現行規約のどこを直すかを洗い出すところから始めます。
管理規約スタジオは、現行規約を取り込むと標準管理規約・改正法との差分を条文単位で洗い出し、新旧対照表と改正案を出力する実務者向けツールです(運営会社のサービス)。
管理規約スタジオを見るコネル
管理組合の相談コンシェルジュ
管理組合を中心に、情報・ツール・専門家をつなぐ、管理コネクトの案内役です。 制度や実務をかみくだいて整理し、判断はみなさまと専門家に委ねます。 口ぐせは「いっしょに、よい答えを見つけよう」。


